同名人気コミックを原作に、『クローズZERO』シリーズなどの三池崇史監督がメガホンを取ったアクションエンターテイメント大作、映画『テラフォーマーズ』が4月29日から公開される。2599年を舞台に、ある生物が異常進化した姿テラフォーマーと、組み込まれた昆虫のDNAによって変異する力を手に入れた隊員たちとの戦いを描く。CG、VFXを駆使した撮影の裏側や、特殊メークで撮影に臨んだ心境を、主演の伊藤英明(小町小吉役)と山下智久(武藤仁役)が語った。
─撮影を振り返って、役作りや演出などで意識したことを教えてください。
伊藤 勢いがあってテンポが良くて、アトラクションのような映画になればと思っていましたので、普通の作品のように小難しくは考えなかったです。一つのエンターテインメントとしてどういう作品にしたいか、どういう人に見てもらって、どういう人たちがこういう映画に興味を持つのか、そういうことを考えて臨みました。
山下 僕は最初に監督から「とにかくハングリーで、周りに敵意むき出しで、常に飢えている状態で」とは言われました。監督がワンシーンごとに丁寧に演出してくださって、ワンカット、ワンカットに必死に取り組んで出来上がった感じでした。
─お二人はこれまでにもドラマなどで共演されていますが、互いの印象はいかがでしたか。
山下 映画化が決まる前に原作の漫画を読みながら小吉は伊藤さんみたいと思っていましたし、伊藤さんが主演と聞いてぜひ参加させていただきたいと思いました。伊藤さんとは24歳の時に初めてお会いして、今でもプライベートでもお世話になっている兄貴で、頼れる存在です。撮影現場でも伊藤さんが来ると温度が上がるので、それだけ人にエネルギーを与えてくれる人だと思います。
伊藤 照れるな(笑)。山下くんは口数は少ないけど、すごく熱いし、男っぽいし、ストイックだし、礼儀正しいし、自分の周りの人を大事にしている優しい男です。共演していても頼りになるというか、思いっ切りぶつかっていけるし、年齢は違うけど山下くんの方がアーティストだったり、俺にはできないこともいろいろやっているから、刺激になることが多いです。
─撮影前に何か準備したものはありますか。
伊藤 昆虫図鑑を見直したかな(笑)。(蜂毒アレルギーの)アナフィラキシーショックとか本当なんだ、って。読んで監督にあげたら「俺も持ってるよ」って(笑)。
山下 監督には「スーツが入るようにちょっと鍛えておいてね」って言われました。
伊藤 「アルジャーノンに花束を」が終わった後でちょっと痩せちゃってたからね。びっくりした。でも、いい体しているよ。
─火星で変異してから小吉は空手、仁はキックボクシングとそれぞれのスタイルでテラフォーマーと戦いますが、アクションの撮影はどんな感じでしたか。
伊藤 総重量20キロはあるスーツを着ていたので、長丁場で汗もかくし、そういった意味でも全員大変だったと思います。パンチを出せば汗が飛ぶし、ブーツを脱げばたまった汗がどっと出るし、サウナ状態でした。でも、次の日になるときれいに乾いていたので、衣装さんが寝ずに作業してくれていたんだなと。撮影は大変でしたが、役者は他の部署に比べると楽だったかもしれないです。
山下 僕は下半身がほぼCGだったので、上半身と下半身のイメージを近づけるのが大変でした。監督も分かりやすいように物差しで軌道を教えてくれたり、下半身だけ合成用のタイツをはいて演技をしたりと新しい感じで、出来上がりのイメージを想像するのが難しかったです。
─劇中で動いているテラフォーマーは全てCG、俳優陣はブルーバックで撮影したそうですが、どのような感じでしたか。
伊藤 怒ったり、泣いたり、見えないものに対して感情を出すのは難しかったです。戦うシーンもパンチを避けて、殴って、というのを一人で演じなければならないので、常に想像力を働かせて監督の考えに必死についていきました。例えば、テラフォーマーと小吉が戦っているシーンはまずテラフォ―マーとどういう動きをするかゆっくり合わせるんです。その動きが分かったら、今度はテラフォ―マーを外して本編で使う僕だけを撮って、次はテラフォ―マーの動きを撮る。そうやって一つのシーンのために最低3~4回撮っていました。
─セットの撮影で普段と違ったところなどはありましたか。
伊藤 小吉が(宇宙船バグズ2号から)探査機に飛び乗ってつかむシーンも、後から完成した絵を見て、もっと風圧でゆがむ表情をリアルにしたり、違う演技ができたな、という思いもあります。CGや背景、VFXがどう合わさるか撮影中は分からないので、思いっきり走ったり飛んだり、余計な動きができないもどかしさがありました。
─完成した作品を見て、一番驚いたところはどこですか。
伊藤 ケイン(・コスギ)さんがテラフォ―マーと戦うシーン、あそこのアクションがすごかったです。あのスーツの重さでよくあれだけ回ったり跳んだりしてるなと。三段蹴りもやっていましたし、もうちょっと映画の中でじっくり見てみたかったです。
山下 僕はCGのクオリティーに驚きました。想像の何倍もすごかったし、自分のアクションもいい具合に体と足のバランスが仕上がっていて、自分が自分じゃない感じでした。
伊藤 監督は撮影が終わってVFXなどを完成させるまで半年しかなかったのに、よくこれだけのものを作ったなと思います。撮影中は出来上がりのクオリティーは分からないですが、そのクオリティーを信じて撮り続けていた監督がすごいと思いました。僕ら役者に対しても絶大な信頼を置いてくれていて、自由にできる中でもより良くするためにいい意味での不安もあって、試行錯誤しながらやっていました。
─劇中で伊藤さんはオオスズメバチ、山下さんはサバクトビバッタの昆虫DNAによって変異して戦いますが、特殊メークした自分の姿を初めて見た時の感想は?
山下 特殊メークってすごいなって思ったのと、これ俺って分からないなって(笑)
伊藤 言ちゃった(笑)。でも分かるよ、目力とかさ。やっぱ山Pは声がいいよね。俺はかっこいいしワクワクしましたけど、2日ぐらいしてこれがずっと続くかと思うとゾッとしました。強度が必要だからメークもしっかりしないといけなくて、付けるのも取るのも大変で。最初はメークをするだけで2時間半、最後でも1時間半かかりました。取るのも俺は5分ぐらいでガバッとはがしていたけど、みんな1時間近くかかりましたからね。
山下 特殊メークさんが、いつも伊藤さんがそうやってはがすのに「あれは絶対にマネしないでください」って言っていました(笑)
─特殊メークをしている状態の演技はどんな感じでしたか。
伊藤 普段と違って自分でどういう顔や表情をしているかが分からないので、どうやったら怖く見えるのかメークをしている最中に確かめていました。あと、変異した時は狂暴性が増したような演技にしたかったので、全体的な姿勢だったり、形とかで大きく見せるようにしたりして。
山下 僕も自分が思っているよりも二つぐらい感情を上乗せして演じるようにしました。一つ一つエネルギーを使ってすごく疲れました。
伊藤 そうだよね。リアルなお芝居よりは大げさに演じないと(変異前との)バランスが取れないというか…。
─最後に、女性ファンに向けて見どころを教えてください。
山下 見ていてワクワクするので、男ってこういうものが好きなんだってちょっと上から見ていただければ。性別も年齢も問わず楽しめるエンターテインメントになっていると思いますので、ぜひ女性同士でも見ていただけたらと思います。
─もし、“G”が出たら戦いますか?逃げますか?
山下 誰か、守らなければならない人たちがいれば頑張りますけど、それ以外なら逃げます(笑)
取材&テキスト:中村好伸