本格的に普及し始めてから10年以上経ち、初期に購入した層に加え、2009年~2011年頃に「家電エコポイント制度」を利用して購入した層の買い替えが始まり、ここ数年、不振だった液晶テレビの売れ行きが持ち直すと予測されている。2016年はオリンピックイヤーでもあり、メーカーや販売店は、買い替えを機に、サイズアップを提案。従来より高精細な「4K」に対応したテレビ(4Kテレビ)も価格が下がり、値ごろ感が増してきた。家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」の過去10年間のデータをもとに、4Kテレビの普及時期を予想したい。

●ピークは地デジ移行直前の2010年 底値は2012年 ここ3年はやや値上がり

「BCNランキング」によると、2005年以降、液晶テレビの販売台数は、2010年が最も多く、2011年7月に地上アナログ放送が終了し、地上デジタル放送に移行したことによる特需が終わると一気に減り、2013年以降は、2007年と同等の水準に戻った。

ワンセグテレビなど携帯向けを含む全サイズの税抜平均単価は2012年が最も低く、2014年は約6200円、2015年は約2600円、それぞれ、前年に比べ、上昇している。画面サイズ帯別に集計しても、「50型以上」を除き、傾向は変わらず、どのサイズ帯も、2012年または2013年が最も低い。「50型以上」も、直近3年間は値下がり幅は小さく、ほぼ横ばいだ。価格だけで判断するなら、買い時は2012年だったのかもしれない。

●一番人気は今なお32型 40型以上も3割を超える

画面サイズは、出始めた当初は”大画面”と呼ばれ、技術の進化によって大型化が進むと、リビング・パーソナル向けの”中小型サイズ”と呼ばれるようになった「32型」が一番人気で、最も多かった2007年・2008年は、32型がほとんどの「30型台」が全体の約46%を占めた。2012年以降、やや下がって4割を切り、2015年は31.7%まで低下した。

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一方、40型以上を「大画面」と定義すると、大画面の割合は、2010年と2012年以降は2割を超え、2014年には3割を超えた。さらに大きな50型以上を大画面とすると、まだ1割程度だが、2013年以降、年を追うごとに拡大している。2006年から過去10年間、ずっと販売台数が最も多かった32型から40型~50型台へ、ようやく大画面化が進みつつある。買い替えが中心になり、地デジ移行前のように「必要に迫られて」ではなく、より良いものを求め、「欲しいから」買うケースが増えたからだと推測する。

●ラインアップ拡大で伸びる4Kテレビ 50型以上は半数が「4K対応」に

液晶テレビ全体の販売台数は低迷しているが、従来のフルHD(1920×1080)の4倍にあたる3840×2160の画素数で映像をきめ細かく表示する4Kテレビは伸びている。2013年の時点ではわずか0.6%に過ぎなかった「4K対応」の割合は、2014年は3.4%、2015年は10.1%に上昇。50型以上に限ると、4K対応率はほぼ半数の48.3%、40型以上に限っても28.6%に達し、今後、さらに高まりそうだ。

 4Kテレビの真価は、ハードとソフトが揃って初めて発揮される。対応コンテンツの不足という弱点は、不発に終わった「3D」と同じだが、見ただけで差がわかる「4K」は受け入れられた。現行のデジタル放送やBDやDVDなど、4K画質ではない映像を4K相当の画質に変換してより美しく表示するアップコンバート機能があるため、先取りしても損はないと判断されたのだろう。

4Kテレビは、ソニー、シャープ、パナソニック、東芝の国内メーカー4社で9割を占め、今のところ、日本メーカーの独壇場。4K以外にも、ハイレゾリューション・オーディオ(ハイレゾ)や新しい著作権保護技術「SeeQVault(シーキューボルト)」、ハイブリッドキャストなど、大画面・高価格帯のプレミアモデルだけに搭載されている最新技術や機能は多い。4Kテレビが伸びた最大の要因は、各社が50型から40型台後半、そして40型台前半と、徐々に4K対応モデルのラインアップを広げ、4Kテレビをメインに据えたことだろう。

その結果、2014年末から、4Kテレビの販売台数は増加し、なかでも、商戦期の2015年12月や2016年3月は多く売れた。平均単価も下がり、過去2年間で30万超から10万円台後半まで下がった。2016年3月の4Kテレビの平均単価は約17.6万円。32型(約4.3万円)や、4K非対応モデルを含む40型以上全体(約12万円)と比べると、だいぶ高額だが、値下がり率は飛び抜けている。

2016年4月の液晶テレビのシリーズ別販売台数ランキングでは、16位・19位・20位に4K対応モデルがランクインした。4Kテレビの1位が60型のシャープ「LC-60US30」、上位10機種中、40型台/50型以上が半々という点にも驚きだ。

●大画面化・4K化を阻む住宅事情と価格差 それでも4K時代は来る!

買い替え時にサイズアップを阻む最大の「壁」は、やはり価格だろう。底値だった2012年頃に比べ、全体的に値上がりしているにも関わらず、前回購入時より安く抑えたいと思っていると、4Kテレビどころか、4K非対応でも、大画面テレビは候補から外れてしまう。

今と同じ場所に置けるかどうか、置いた時に圧迫感を感じないかなど、設置スペースの確保も悩ましいところだ。集合住宅の場合、エレベーターに乗らず、スムーズに搬入できない場合もあり得る。「テレビの大画面化」は、数年前から言われ続けてきたトレンドにもかかわらず、不動産関連の調査によると、首都圏の新築マンションの平均占有面積は、都心回帰の強まりや、建築費の高騰、消費増税などの影響で、この10年、縮小傾向という。既存の住宅はもちろん、新築ですら、空間にゆとりのない住宅事情は何も変わっていないのだ。

総務省のロードマップによると、2016年中にBSを使った4K・8Kの試験放送が、2018年には4K・8Kの実用放送が開始される予定。しかし、4K・8K試験放送のスタート当初は、いま売られている一般向けの4Kテレビでは視聴できず、NHKの試験用モニタでしか視聴できない。そもそも、現状のクオリティで十分という意見もあり、テレビ放送の今後の先行きは不透明だ。

こうしたマイナス要因はあるものの、40型以上では「4K」がスタンダードになり、買い替えるなら、手持ちのテレビより大画面のものをと考えると、必然的に4Kテレビから選ぶことになる。デジタル製品のトレンドは、変わるとなると、一気に変わる。「4K」の登場によって、ようやく大画面化が進み始めた。40型や43型の4Kテレビがさらに値下がれば、買い替えの起爆材となり、意外に早く、ここ2、3年のうちに4Kテレビが主流になるのではないだろうか。(BCN・嵯峨野 芙美)

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