金田一耕助役の吉岡秀隆
昨年7月に放送されたドラマ「悪魔が来りて笛を吹く」に続く「八つ墓村」(BSプレミアム10月12日午後9時~10時59分放送)で金田一耕助役を続投する吉岡秀隆。前回のインタビューでは同役を演じられることに感慨をにじませていたが、今回の心境は? 事件に巻き込まれる青年・井川辰弥役で横溝正史作品に初参戦する村上虹郎と共に話を聞いた。昭和24年に発表され、横溝作品としては最多9回の映像化を誇る本作は、血塗られた伝説と、たたりにまつわる恐怖の連続殺人が起こる八つ墓村で、金田一が事件の謎を追うさまを描く。
-再びオファーを受けたときの率直なお気持ちは?
吉岡 前回は「金田一、キター!」、今回は「八つ墓村、キター!」で、前作と同じスタッフたちと謎の中に入っていけると考えるとうれしかったです。ただ、前作のラストで岡山県警の磯川警部から「八つ墓村で事件です!」と電話がかかってくるシーンがあったので、「八つ墓村に行かなくちゃいけないのかなぁ。嫌だなぁ」とは思っていました(笑)。
-今回はどのような役作りで臨まれましたか。
吉岡 前作は、事件を解決したら終わりではなく、運命にあらがえない人の悲しみを背負ったり、結局誰も救えずに苦悩したりする金田一にした方が僕っぽいし、視聴者も新しい視点で見られて面白いのかなぁと監督と話し合って作りました。今作もそれを踏襲しつつ、前作の難事件の中で苦悩していた金田一を救った、『おまえの仕事は人に生きるわけを探してやることだろう』というせつ子さん(倍賞美津子)の言葉を忘れないように演じました。そして、今作のテーマである「愛」も大事にしました。令和版の「八つ墓村」は、呪いやたたりに愛が勝つという、今までとは違う解釈がある気がしました。
-令和版らしさは楽曲にも表れていますね。
村上 前作では、ジョン・レノンの「マザー」が流れてきて、日本の伝統芸的な作品にイケイケな洋楽がかかっていて、こんな作品は見たことがない!と感動しました。
吉岡 イーグルスの「デスペラード」も使用されていますが、歌詞を読むとドラマとリンクしているので鳥肌が立ちますよね。
-「八つ墓村」と言えば、大正時代に大量殺人事件を起こし、今回の事件の発端を作る田治見要蔵が強烈なインパクトを残すキャラクターですが、音尾琢真さん演じる要蔵はいかがでしたか。
吉岡 僕は映画『八つ墓村』(77)で、山崎努さんが日本刀とショットガンを持つ怖い姿を強烈に覚えていますが、それとは全く違う、悲しくて人間くさい姿は音尾さんならではで、“令和の要蔵”だなと思いました。
-“吉岡流金田一”も、これまでのボサボサ頭と小汚い和装姿から小ぎれいなビジュアルに変化しましたが、どのような反響がありましたか。
吉岡 やっぱり賛否両論ありましたが、いろんな意見が聞けたことは役者として勉強になりました。
村上 僕は金田一が頭をポリポリかくイメージが強いので、そのシーンが少なかったのは残念です(笑)…。
-村上さんは横溝作品に初めて挑まれましたが、オファーを受けたときはどう思われましたか。
村上 僕が見たことのある『八つ墓村』(77年版映画)では、辰弥役がショーケン(萩原健一)さんバージョンだったので、「ショーケン!」と思いましたし、そうそうたる先輩方が名を連ねる横溝作品に出演できて光栄だと思いました。それから、親父(村上淳)に今回の話をしたら、「吉岡さんとは絶対にやった方がいい」と強めに勧められました。
-お二人は初共演だそうですが、お互いの印象をお聞かせください。
吉岡 独特の色気や格好良さ、存在感があってすごいなぁと思います。辰弥役も村上くんなりの解釈が独特で、やはり別格な役者と感じました。
村上 ちょうど昨日、吉岡さんが出演されている映画『男はつらいよ ぼくの伯父さん』(89)、『八月の狂詩曲』(91)、『ALWAYS 三丁目の夕日』(05)を3本立てで見ましたが、吉岡さんはどこか頼りない役が多いイメージなのですが、「いつも安心感がない」という安心感があると思います(笑)。それに、誰とも絶対的に違うリズムやトーンをお持ちの方。僕を「別格」と表現してくださいましたが、「人と違う」という意味では、吉岡さんは“その筋の先輩”みたいな感覚です。
吉岡 危ないね。「あいつら、ズレてるぜ…」って思われているかもね(笑)。
-そんな吉岡さんだから演じられる、人間味あふれる、これまでとは一味違う金田一耕助の3作目に期待するファンも多いと思います。
吉岡 金田一は魅力的ではあるけど、いきなり足元をすくわれるような油断できない怖い役でもあり、そういう難役を演じてこられた歴代の役者の仲間に僕を加えていただいたことはうれしいです。でも、役者が金田一耕助を選ぶのではなく、金田一耕助が役者を選んでいるような不思議な錯覚があります。だから、次も僕かもしれないけど、ほかの人かもしれません。金田一がどこかで狙っているんじゃないかな(笑)。
(取材・文/錦怜那)
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