例えば同じ企画を他の都市でやったらどうなるだろうか。できなくはないと思うけど、多分もっとその土地の色が色濃く反映された“ご当地色”の強いものになると思う。『東京こんぴ』を聴くと、東京とは都市そのものがカラーを持って自立しているわけではなく、そこに集まる人々の愛憎入り乱れる(そう、決して憧れとかプラスの感情だけじゃないのも東京の大きな特徴)さまざまな想いによって形づくられているものなのだと、改めて気付かされる。
だから本作も東京をテーマにしてはいるけど、そこで“東京っぽさ”という統一感があるわけではなく、それぞれのアーティストの個性が非常にわかりやすく反映された内容になっている。それでいて1枚のアルバムとしての完成度やまとまりが非常に高いのは、スタッフの選曲・編集力のたまものだろう。『東京こんぴ』というシリーズだからこそ感じることのできる「東京像」が、確実にあるのだ。
ちなみに今作収録以外に“東京”が入る曲って、どれくらいあるんだろうか。桑田佳祐『東京』、矢沢永吉『東京』、Mr.Children『東京』、ケツメイシ『東京』、BUMP OF CHICKEN『東京賛歌』、flumpool『東京哀歌』、福山雅治『東京にもあったんだ』、DREAMS COME TRUE『東京ATLAS』……うーん、キリがなさすぎる!
調べによると、タイトルに「東京」という地名が入る楽曲はなんと2000曲以上あるという。CD1枚あたり15曲収録で計算して、ええと……まあとにかく、まだまだたくさん『東京こんぴ』シリーズを作れる資源はあるということだ。
というわけで、現在のクオリティの高さは保ってもらいながら、さらなる『東京こんぴ』シリーズの続編リリースに期待したい。個人的にはピチカート・ファイヴ『東京は夜の七時』と、銀杏BOYZ『東京』が、今後どんなふうにセレクトされるのかが楽しみだ。