NHKの大河ドラマ「真田丸」で主人公、真田信繁(堺雅人)の兄、信幸(大泉洋)の正室で、徳川家との政略結婚で真田家に嫁いだ稲を演じている吉田羊。本多忠勝(藤岡弘)の娘としてのプライドを乗り越え、信幸と心を通い合わせる稲の心の変化を語る。
-これまでの三谷幸喜脚本の印象は?
役者のことを愛してくださっていると思います。ただ、三谷さんの頭の中では役のイメージが出来上がっているので、その通りにやっても詰まらない。俳優としては、そこを超えていきたいという思いがあります。俳優としての想像力や演技力が鍛えられる作家だという感じがします。
-稲はどんな女性だと感じていますか。
一見クールですが、熱いものを秘めていて、真田家の家族愛に触れて変わっていく女性です。
-これまで演技してみて、稲の人物像をどう考えていますか。
お父さまに溺愛された方なのできちんと愛を知っている人だと思います。だから信幸さんも真田家もきちんと愛した方だと思います。
-大泉さんとの共演はいかがでしたか。
波長が合うんです。あうんの呼吸。徳川家康(内野聖陽)の前で2人が顔見せをするシーンで、それぞれ名を名乗って顔を上げる時、相談もしていないのに同じタイミングで上げたんです。「ああ、この人となら夫婦になれる」と思いました(笑)。その時の大泉さんの顔がすごくハンサムに見えました。稲も本当はその瞬間に「ああ、この人すてき」って思ったのかもしれません。
-今回は、大泉さんのコミカルな部分を封印するという三谷さんの戦略があります。そういう大泉さんは、共演者としては調子が狂いますか。
いいえ、ありです。ギャップ萌えしますよね(笑)。ただ、大泉さんは必死にそういうコミカルな部分を抑えているのを感じます。でも1年もあの役をやると、きっとどこからが自分なのかが分からなくなるぐらい信幸の人生を生きているわけですし、もしかしたら、そうやってのみ込むことこそが信幸さんの気持ちなのかもしれません。私たち「洋羊コンビ」、今のところ、夫婦漫才みたいな感じになっています(笑)。
-正室だったおこう(長野里美)が侍女として真田家にいることを知って、稲はどう思ったのでしょうか。
それは稲も傷ついたでしょう。最初は信幸に冷たく接していたものを、実は前の正室が近くにいると聞けば気になり始める。それがだんだん好意に変わり、仲むつまじい夫婦になる。その過程がすごく人間的で、この時代に生きた血の通った人間だと思えますよね。
-信幸を受け入れた後の芝居の変化はどう意識しましたか。
不思議なもので、ずっと突っぱねていたのが、信幸に突然迫るシーンで、気持ちの奥の奥からの女心を表現した時に、すごく楽になったんです。「ずっとこうしたかったんだわ、私」って思ったの。抱き着く前と後では信幸さんを見る目が違うし、楽に演じています。
-信幸さんも正室と前正室が一つ屋根の下にいると大変でしょうね。
地震の後に私の部屋に来て、「稲、大丈夫か」って抱き締めた後に、おこうさんの所にも行って抱き締めるシーンがあったんですけど、大泉さんったらリハーサルで私に「おこう」って言ったんです(笑)。本当にぶちぎれました(笑)。その瞬間、普通に悔しかったですから。大泉さんは土下座していましたけど、リアルにこんなことがあったんじゃないかなと。
-藤岡さんのお父さまぶりは?
俳優の藤岡さんとしても父の忠勝としても、現場にいらっしゃるだけで絶大なる安心感があります。
-藤岡さんから武術のプロとしてのアドバイスは受けましたか。
なぎなたは先が重くて、振り回した時に引っ張られて体の中心がぶれます。なので「しっかりと丹田に力を入れて立つと良いですよ」という専門的なアドバイスを頂きました。
-堺さんはいかがですか。
私、実は大河ドラマの「篤姫」で堺さんが演じた徳川家定公が好きで、携帯の待ち受けにしていたことがあるぐらいなので、一ファンとして見てしまいます。ずっと共演したかった方なのですが、一緒のシーンが少ないんですよ(笑)。