「この会場の女性のみなさん、迷いはありませんか?」と冗談ぽく問いかけるMCに続く、バックに流れるシニカルなアニメーションも印象的だった『デルモ』。近年の彼らの流れを汲む、ポジティブなメッセージが込められた『End of the day』。さらに言わずもがなの名ロック・バラード『終わりなき旅』。これらが違和感なく連なっていくさまは、彼らが鳴らしてきた音楽の多様性を示すと同時に、そんな楽曲たちを生み出し続けるMr.Childrenという器の巨大さを表していた。
さらに『Dance Dance Dance』『ニシエヒガシエ』『フェイク』と、オーディエンスを爆発させる新旧のロック・チューンを立て続けに連打し、ロック・バンドとしてのダイナミズム、そしてメロディとリフの強靭さを見せ付ける。自分は特に今回のライブを通して、彼らの作品における歌メロとリフのパワーを改めて痛感した。
桜井和寿が綴る歌詞の世界観が、Mr.Childrenの魅力の多くを占めることは、言うまでもないだろう。しかしそれと同じくらい、むしろライブのある瞬間においては歌詞の持つメッセージが軽く吹っ飛んでしまうほどの快楽と刺激に満ちたメロディは、Mr.Childrenにとって強力な武器だ。暴力的なまでに聴き手の意識を鷲掴みにするそんなメロディにこそ、彼らの真髄があるような気すらする。アグレッシブなモードが続いた後で演奏された『365日』では、そんなMr.Childrenだから鳴らすことのできる、優しく心に染み入るメロディが会場を満たした。
これも今回改めて思ったことだが、桜井和寿という人のMCは、けっこう面白い。以下、『365日』が終わった後のMCを綴ってみる。「みんないつもより心拍数が若干高めなので、その分ドームの酸素が薄うございます。でも、もっと酸素が薄い、その真ん中に行きとうございます!」。そしてステージ中央から伸びる花道を抜け、小さなセンターステージに移動するのだが、なんなんだこの全く脈絡のない古文調(?)の語り口は! みんなワーワー盛り上がってはいるが、誰も疑問に思っていないのか!? これは極端な例としても、全編通して「桜井節」としか表現できない、独特のユーモアを持ったMCを繰り広げた。そしてこの独特さはMCだけでなく、Mr.Childrenというバンドそのものにも言えることだと思う。