佐藤健の勢いが止まらない。2006年に俳優デビューした彼は、翌年「仮面ライダー電王」の野上良太郎/仮面ライダー電王役でドラマ初主演を果たし、一気にブレーク。主演映画『るろうに剣心』シリーズでトップスターの座に就いた。
そして、19年、連続テレビ小説「半分、青い。」でのヒロインの幼なじみ・萩尾律役と、ドラマ「義母と娘のブルース」の麦田章役を同時期に演じて、演技力の高さも示し、20年1月期ドラマ「恋はつづくよどこまでも」の天堂浬役で再び大きな注目を集めた。
ここに列挙しただけでも分かるように、佐藤が演じる役柄は幅広い。ラブストーリーに出演したかと思えば、次はアクションと、イメージが固定されないように、あえて毛色の違う作品に出演していることがうかがえる。それ故、佐藤の出演作は多彩だ。どれから見ればいいのか迷うファンも多いことだろう。今回は、佐藤が演じた役柄のタイプ別にお薦め映画を紹介しよう。
天堂先生で「健ファン」になった、クールな佐藤がツボの人には、『いぬやしき』(18)をピックアップ。奥浩哉のSF漫画を原作にした本作は、宇宙人の手によって機械の体となった初老の男性と高校生の苦悩と闘いを描いたもの。
佐藤は、家族や友人に対しては優しい青年ながら、それ以外の人間には無関心という二面性を持つ獅子神皓を演じた。「恋つづ」とはかけ離れた、アクション満載のど派手な作品だが、獅子神が木梨憲武演じる主人公・犬屋敷壱郎と闘うシーンで見せる冷たい表情にドキッとする人も多いはず。
真っすぐな好青年役が好きな人には『8年越しの花嫁 奇跡の実話』(17)をお薦めしたい。土屋太鳳とW主演した本作は、岡山に住むあるカップルに起こった実話を映画化したもの。結婚式の直前、原因不明の病によって意識不明となった花嫁・麻衣(土屋)と、彼女を待ち続けた尚志(佐藤)との愛と奇跡を描く。
穏やかで真面目で、ひたむきに愛を注いでくれる尚志の姿は、胸キュンを通り越えた“尊過ぎる存在”。こんな男性に愛されたいと憧れる女性も多いはず。
役を演じていないときには、理知的で落ち着いたイメージの強い佐藤だが、少年らしさが爆発した無邪気な役柄も見事にハマる。『バクマン。』(15)では冴えない文化系の高校生役で、夢に向かってまい進する姿を見せる。
本作は、優れた画力を持ちながら何の展望もなく毎日を過ごしていた真城最高(佐藤)が、漫画原作家を目指す高木秋人(神木隆之介)と出会い、週刊少年ジャンプ連載を目標に奮闘する姿を描く青春ドラマ。イケメンで間違いなくモテるであろう佐藤だが、劇中では「モテない童貞」の空気を持った高校生を初々しく演じており、彼の演技力の高さが実感できる。
そして、全ての健ファンが見逃してはならないのが『るろうに剣心』シリーズだ。同シリーズは、幕末時代に「人斬り抜刀斎」と恐れられた剣客・緋村剣心が、さまざまな出会いや戦いを通して生き方を模索していく物語。これまで3作品が公開され、シリーズ累計の興行収入は125億円以上、観客動員数は980万人を突破するほどの大ヒットを記録した。
20年夏には、『るろうに剣心 最終章』の「The Final」「The Beginning」の2作品連続公開も決定しており、早くも高い期待が寄せられている。まさに佐藤の代表作といえる作品だ。
佐藤の高い身体能力を生かした超絶アクションが目を引く本シリーズだが、剣心のどこか抜けていて愛らしいキャラクターも魅力。それでいて、大切なものを守るためには死地にも飛び込み、強い信念のもと戦い続ける剣心は、女性のみならず、男からもほれられる存在だといえよう。ぜひ、シリーズを通しで鑑賞してもらいたい。
作品によってそのイメージが大きく変わる佐藤。取材では、完璧なまでのジェントルマンぶりが印象深い。製作発表や記者会見での佐藤は、レディーファーストを徹底し、降壇は常に最後。深々とお辞儀をして会場を後にする。当たり前のようだが、実はそれができる人はそう多くはない。そんな小さなところからも、佐藤の男前ぶりが伝わってくる。
20年は、『るろうに剣心』のほかにも、中山七里原作・瀬々敬久監督の『護られなかった者たちへ』での主演も決定しており、まだまだその人気は続きそうだ。(嶋田真己)