北原里英(スタイリスト:丸山恵理子(オサレカンパニー)、ヘアメイク:MARVEE、オサレカンパニー)廣瀬智紀(スタイリスト:伊藤省吾(sitor)、ヘアメイク:FUJIU JIMI)

 劇作家で演出家の西条みつとしが主宰する劇団「TAIYO MAGIC FILM」の第1回公演作品として12年に上演された「HERO」を、西条が自らメガホンを取り映画化した『HERO~2020~』が6月19日からシネ・リーブル池袋ほかで全国順次公開される。2年間限定の約束で始まった広樹と浅美の恋だったが、広樹には隠している秘密があった。約束の期限の日である2年後、2人の恋を応援する広樹の妹・真菜の起こした行動が大騒動を巻き起こす。19年に再演された舞台版で主人公・広樹を演じた廣瀬智紀と、浅美を演じた北原里英が、映画版でも同役を続投し、笑って泣けるハートウォーミングな物語をつづる。廣瀬と北原に、撮影の裏話や本作の見どころを聞いた。

-舞台版に引き続き、同じ役柄での出演になりますが、慣れ親しんだ共演者との撮影はやりやすかったのではないですか。

廣瀬 はい、すごくやりやすかったです。舞台で作ってきたベースがあったので、キャスト同士の関係性もすでに作れていましたし、映画も、西条さんが監督をしてくださっていたこともあって、すんなりと入れる世界観が出来上がっていました。もちろん、映像化するに当たっての課題はあったと思いますが、舞台をやっていたということは一つの強みになったと思います。

北原 私もそう思います。

-最初に本作の脚本を読んだとき、作品のどこに魅力を感じましたか。

廣瀬 僕は、12年の舞台にも出ているので、西条さんとは8年ほどのお付き合いになりますが、西条さんの作品には、伏線を張りながら、最後にどんでん返しがありつつ、みんなが心温まる、見ていてほっこりする、という魅力がどの作品にもあると思います。この作品でも、観客の皆さんは冒頭から「広樹、大丈夫なの?」と思いながら見ると思いますが、最後には「そういうことだったんだ!」と納得できる気持ちよさがあると思うので、僕はそこが大好きです。

北原 私が演じた浅美は、女の子らしくて、奥ゆかしくて、けなげなところが魅力的なキャラクターだと思ったのですが、自分とは全く違うタイプだったので、どう表現したらいいんだろうって、舞台の稽古に入る前は不安でした。

-稽古を重ねることで、手応えをつかんでいったのですか。

北原 徐々に、ですね。稽古の初日に、西条さんに不安な気持ちをお伝えしたら、「そう思っている方が、この先どう変わっていくのか楽しみだ」と言ってくださったので、安心することができました。それから、少しずつ浅美という役を理解していった感じです。

-廣瀬さんは広樹を演じるに当たって、どんなことを意識しましたか。

廣瀬 西条さんから「演じるのではなくて、その人としてそこにいてほしい」というディレクションを頂いたので、それを意識しながら、一つ一つ突き詰めて作り上げていきました。舞台の場合、本番を含めると1カ月半ぐらいの時間を使って稽古ができるので、突き詰めることもできましたし、考えれば考えるほどそのキャラクターに近づいていけたと思うので、その期間があったことはよかったと思います。最終的に、舞台の本番を迎える頃には、ステージに立ったら、自然と広樹として立っていられるようになっていたので。

-舞台版から演技に変化をつけたところはありますか。

北原 私は、ラストのシーンです。舞台では、どうしても感情を強く出してしまいがちだったんですが、映像の場合、そこで感情を爆発させてしまうと違和感が出てしまうので、西条さんと話し合って抑えた演技にしました。でも、舞台と同じシーンを映像の撮影でもやるというのは難しかったです。特に、冒頭の病院で浅美と広樹が会話をしているシーンは、舞台のお稽古でやり過ぎたというぐらい繰り返していたので、演技が体に浸みついていて、変えようと思っても変えられなかったということもありました。

廣瀬 舞台でも、2人の空気感を作る上で大事なシーンだったから、その冒頭のシーンのお稽古はたくさんやったんです。だから、そのシーンだけは特にね。

北原 寝ていても(せりふが)言えそうなぐらいお稽古しました(笑)。

廣瀬 僕は、意識的に変えたというところはなかったですが、秘密を抱えているという役だったので、陰うつな気持ちに成り過ぎてしまって、西条さんから「もうちょっと明るくラフに」というディレクションはありました。確かに、映像では、陰うつさが出過ぎてしまうと、逆に人間らしさを失っているように見えてしまうので、あえて明るく演じているシーンもあります。

-印象に残っている撮影は?

北原 舞台では描けなかった回想シーンは、「2人は仲がよかったんだな、ラブラブだったんだな」と思えてうれしかったです。そのシーンの撮影は撮影序盤に行ったので、その後の撮影ではさらに気持ちが入った気がします。

廣瀬 うん、楽しかったね、デートのシーンは。その楽しい、仲がよかったという思いを共有してその後の撮影ができたのはよかったです。舞台では描けなかったシーンでもあるので。

北原 私は広樹が働いている工場のシーンも好きです。普段の廣瀬さんからは、あまり工場で働く姿がイメージできなかったんですが、撮影で実際にその姿を見たら、広樹だってなぜか納得できたんです。広樹のことが、より“広樹”に思えた。なので、そのシーンを実際に見ることができたのはお芝居の上でもよかったと思いました。

廣瀬 工場のシーンは僕自身も印象的です。広樹が一人で残業して、ちょっとだけ残ってしまった仕事をこなしているというシーンがあったんですが、広樹の人柄があふれていてすごくいいシーンだなと思いました。それから、そんな広樹に声を掛けて手伝ってくれる浅美もすごくすてきに見えました。2人の恋心がここから始まったことが分かるとても大事なシーンで、僕も大好きなシーンです。

-公開を楽しみにしているファンにメッセージをお願いします。

北原 この映画を見終わったとき、誰かのヒーローになれるような行動をしようと思ってもらえたらうれしいですし、沈みがちな昨今の日本にぴったりの、心が温かくなる映画になっていると思いますので、ぜひご覧ください!

廣瀬 日々の生活の中で、癒やしを求めたいときに見てもらいたい映画です。心が穏やかに、優しい気持ちになれると思うので、気持ちが沈んだときや、暗い気持ちになったときに見て、少しでもその気持ちが楽になったらいいなと思います。

(取材・文・写真/嶋田真己)

『HERO~2020~』は、6月19日(金)からシネ・リーブル池袋ほか全国順次公開。
<公式HP>www.mmj-pro.co.jp/hero2020/

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