『ALL SINGLES BEST 2』のアートワークを担当したNIGO(r)とコブクロ。

「ボーカリストとしての余白はまだまだ突き詰められるだろうとか、技術的なところでの余地はまだまだあるので……。そこは夢ではなくて、目標ですね。何十年かけても100点になることはないと思うんで、コブクロとして永遠に高めていけるかなと思っています」

筆者が彼らを初めて取材した際、自身のボーカリストとしての姿勢をそう語ってくれたのは黒田だった。永遠に高め続けていかなければならないと自らに成長を課した言葉は、“歌の求道者”とでも表現できそうな彼らの根本にある姿勢を体現するものでもあるだろう。そのコブクロの“歌”への強い欲求を目の当たりにできる場こそ、まさに彼らのライヴだ。例えば『桜』は、彼らのライヴではマイクを使わず生の声で歌い上げるシーンが強く印象に残っているファンも多いだろう。

今回の『ALL SINGLES BEST 2』には2006年の大阪城ホール公演のライヴテイクが収録されたが、そのほかでも、『ファンフェスタ2008 10YEARS SPECIAL』が開催された和歌山県・紀三井寺運動公園陸上競技場などでは、2万5千人もの観客が見守る大会場に響き渡ったアカペラの歌声が感動を読んだ。そんな一幕に限らず、どんな場所でも、どんな曲でも、“生身の歌”でコブクロは聴き手と向かい合う。

「あの歌がなければ僕らはあの過酷な路上時代はたぶん乗り切れなかった。そういう歌ってなんなのかなって考えると、自分で作った自分用のお守りみたいなもので」

前述の黒田の言葉と同じく、以前の取材でそう小渕が語ったのは、冒頭の『ミュージックステーション』でも披露した『YELL~エール~』に注ぐ彼らの思い。コブクロが結成される前から小渕と黒田それぞれで続けていた、故郷・大阪のストリートライヴ。そこでの出会いがコブクロ結成のきっかけになり、当時から彼らを支えてきたこの1曲『YELL~エール~』でも、ふたりの全身全霊の声とギターは家路を急ぐ街行く人々の足を多く止めたに違いない。