第14週を終え、折り返しを過ぎた「ひよっこ」。東京で働き始めたみね子(有村架純)は、工場の倒産などのつらい出来事を経験しながら、さまざまな人々との出会いを重ねてきた。登場人物の多彩な顔ぶれは、本作の大きな魅力でもある。その中から今回は、個性が際立つ“三枚目な男たち”に注目してみた。
まずは、藤子不二雄に憧れ、漫画家を目指して富山から上京してきた新田啓輔と坪内祐二のコンビから。みね子が暮らすアパートあかね荘の住人だが、漫画家として芽が出そうな気配は、今のところない様子。それでも諦めず、2人で日々奮闘している。
新田役の岡山天音は、主役から脇役まで幅広くこなす演技力が持ち味。最近は「貴族探偵」(フジテレビ系)で、生瀬勝久扮(ふん)する上昇志向の強い刑事の部下で体温低めの若手刑事をコミカルに演じていた。
その一方、主演した青春映画『ポエトリーエンジェル』(16)では、“詩のボクシング”に打ち込む農家の青年を熱演するなど、作品に合わせて柔軟な演技を披露。新田役では、のんびりとしたたたずまいがユーモラスな雰囲気を醸し出している。
坪内を演じる浅香航大は、182センチの長身と整ったルックスで、イケメン俳優に分類されてもおかしくないほど。「マッサン」(14~15)では、堤真一扮する商社社長・鴨居欣次郎を嫌う息子をシリアスに演じて存在感を発揮した。
だが、彼の武器はそんなルックスを持ちながら、コミカルな芝居もこなせる点だ。今年放送されたコメディー「増山超能力師事務所」(日本テレビ系)では、心優しい三枚目の超能力者を好演。のんびりとした新田と好対照をなす坪内役のにぎやかな芝居は、絶妙なコンビネーションを見せている。
新田&坪内コンビが漫画家への夢を実現できるのかどうか。岡山&浅香の息の合った芝居と共に注目していきたい。
そしてもう一組、意外な名(迷?)コンビとなったのが、みね子の職場である、すずふり亭のコック、井川元治とみね子の叔父の小祝宗男だ。
お調子者でさぼり癖のある元治と、茨城の田舎でザ・ビートルズに憧れ続けてきた宗男は、どちらも単独ではややはみ出した存在。ところが、ビートルズの来日に合わせて宗男が上京してきた途端、そのアグレッシブな勢いが元治のやる気のなさにバチッとハマり、息もぴったりの掛け合いが飛び出し始めた。
元治役のやついいちろうは、お笑いコンビ、エレキコミックとして活動する一方、DJとして音楽方面でも才能を発揮。CDをリリースし、ライブを開催するなど、幅広く活躍している。
宗男役の峯田和伸も、俳優の他、バンド、銀杏BOYZのメンバーとして活動するミュージシャン。やついのCDに峯田が参加するほどの関係でもあり、音楽という共通項が2人をうまく結び付け、見事なコンビ演技につながっているのかもしれない。
ビートルズの離日と共に茨城へ帰った宗男だが、第83回で別れを惜しんで2人が抱き合う姿は、悲しさよりも笑いがこぼれるほほ笑ましい一幕だった。2人の掛け合いがこれで終わってしまうのは惜しい気もするので、再会を期待したいところだ。
みね子を取り巻く三枚目な男たちには、他にも中華料理店店主の福田五郎(光石研)や和菓子屋の柏木一郎(三宅裕司)などがいる。彼らとの交流を経て、“ひよっこ”のみね子がどのように羽ばたいていくのか。残り3カ月、みね子の周囲で繰り広げられる男たちのユーモラスな日常を存分に楽しみたい。(井上健一)