というわけで、フェスのメインシーズンじゃない冬でも、これだけのフェスが行われているのである(ざっと挙げただけなので、実際はもっとあるはず)。これって10年前じゃ考えられなかったことで、音楽好き&お祭り好きとしては単純にいい時代になったもんだなーと思う。今の状況を「フェス飽和時代」なんて揶揄する人もいるけど、どこのフェスも独自のアティテュードや信念を持っているし、そういうフェスが必然的に今後も生き残っていくのだと思う。

さて個人的に、2011年を象徴するフェスとして強く記憶に残っているのが『FREEDOMMUNE 0 <ZERO> (フリードミューン ゼロ)』だ。

『FREEDOMMUNE 0 <ZERO>』は、宇川直宏が主宰するライブストリーミングサイト&スタジオ『DOMMUNE』によって立ち上がった、東日本大震災復興支援イベント。出演は冨田勲にジェフ・ミルズ、小室哲哉に神聖かまってちゃんまでカバーするカオスっぷり、しかも入場はフリー、当日の模様は全ステージをUSTREAMで全世界配信、そしてフェスの収益金と現地で募った寄付金、さらには配信を通じて寄付を募り、その全額を被災地に寄付するという、とんでもないスケールのフェスだった。

開催告知ページ

復興支援ページ

……のだが、開催日の8月19日当日、関東に強力な台風が直撃。会場となった川崎・東扇島東公園にも豪風雨が吹き荒れ、やむなく開催中止となってしまったのだった。震災復興を掲げたフェスが自然の猛威に阻まれるとは……。川崎駅前のシャトルバス乗り場で中止のアナウンスを聞いたとき、出演者・関係者とオーディエンスの安全を考慮して中止を決定した主催者側の英断に感服しつつ、やっぱりものすごく残念だった。実現していれば、3.11以降のメディア/エンタテインメント/アートのあり方を更新する、エポックメイキングなフェスになるはずだったから。








 


 

FREEDOMMUNE 0<ZERO>開催中止に関するご報告とお詫び

中止発表後、ツイッターのタイムラインには主催者側へのクレームはほとんどなく、かわりに賞賛と労いの声があふれていた。『DOMMUNE』というハイクオリティな配信プログラムを身を粉にして提供し続けると同時に、この巨大かつ無謀とも言えるフェスを実現しようとした宇川直宏の真摯な姿勢が、多くの人を心を揺り動かしたのだ。これは自分自身の実感だが、フェスという場を与えられてそこにお邪魔するという“お客さん感覚”ではなく、自分もフェスを形づくるもののひとりとして参加する“当事者意識”が、『FREEDOMMUNE 0 <ZERO>』に関わった人たちにはあったんじゃないか。少なくとも自分はそうだった。だからこそ多くの人を巻き込み、他のフェスにはないリアルな熱を生み出すことができたのだと思う。

開催にまでこぎつける苦労と、中止によって被った損害の大きさを考えると、軽々しく「またやってほしい」とは言えない。けれど、やっぱりいつの日かリベンジが果たされる日を待ちたい。その日まで、今回のインビテーションカードは大事に取っておくつもりだ。
 

例によって話がぐぐいっと逸れましたが、要するに結論としては、この冬、フェス会場でひとりベロンベロンに酔っぱらって、リア充集団にメンチを切る哀れなメガネ男がいたら、それが俺だということです。見つけたら生温かい目で見守っておいてください何卒何卒よろしくお願いいたします。ではみなさまも風邪には気をつけて、よい冬フェスを!