■競輪の世界を知るにはうってつけの『Odds GP!』

そんな競輪の世界を知るにはうってつけの漫画がある。双葉社の「漫画アクション」で連載中の『Odds GP!』(石渡治)だ。元々は小学館の「週刊ヤングサンデー」などで連載されていたが、雑誌がなくなると共に「漫画アクション」へと移籍してきた。コミックスでは「週刊ヤングサンデー」連載時のものが、競輪学校編との扱いで『Odds-オッズ-』『Odds plus1』として発売されている。

主人公は高校時代にロードレースで活躍した辻堂麟太郎(つじどう りんたろう)。プロのロードレーサーを目指していたが、家族が交通事故に合い、母親と妹が死亡、入院したままの父親に高額の医療費がかかることから、金を稼ぐ手段として競輪選手を目指す。こうした動機や、それにともなう周囲との軋轢は漫画ではおなじみだが、物語の背景として興味深く読むことができる。先に書いたように『Odds-オッズ-』『Odds plus1』では、競輪学校での育成過程や練習内容も細かく描かれており、これから競輪選手を目指そうと思う人には必読。ただし漫画ゆえの誇張もあれば、実際はこんなものではない(もっと厳しい)との見方もあるので、あくまでも参考と言うことで。

辻堂は同期トップクラス(在校成績5位)の実績と、“競輪学校ケツ竹刀歴代一位”の名誉ある?称号を貰って卒業、競輪選手としてデビューした。本人曰わく「いずれはロードに戻る」と言っていたのだが、競輪の魅力にドップリ浸かってしまっているので、ほとんど不可能かと思われる。漫画にも描かれているのだが、ロードレーサーの体質(筋肉や心肺機能など)とトラックレーサーのそれは大きく異なるのだとか。元々ロードレーサーの辻堂が早々とトラックに転向できたのも奇跡に近いのだろうが、更に戻るとなるとよほどの苦労が要りそうだ。ただ「トラックとロードの強さを兼ね備えて復活」なんてことは、漫画にはありがちの展開なので、いつになるかは不明だが、最終回ではそんな場面が見られるのかもしれない。

デビュー戦でいきなり失格したのは、熱血主人公らしいアクシデントだ。その後はレースに勝利して点数を稼ぎ、クラスを上げていく。競輪選手は大きくS級とA級に分かれ、更に上からSS、S1、S2、A1、A2、A3と6つのクラスに分かれている。もちろんデビューしたての新人である辻堂はA3クラスからスタート。上のクラスになればなるほど出場できるレースの格が上がり、賞金と共に点数も増えていく。そして点数が上がっていけば、クラスが上がっていくことになる。当たり前だが要は勝つことである。

しかし単に勝てばいいと言うものでもない。実力が圧倒的にずば抜けていれば勝ち続けることもできるだろうが、漫画にありがちな“神様の生まれ変わり”とか“伝説の勇者の血を引く”なんて設定はなく、同じ人間なので力が拮抗する場面も出てくる。そこで重要になってくるのが人間関係だ。