■漫画家デビューは若い人が有利?

一般的に漫画家のデビュー年齢は若い方が有利と言われている。実際、先に挙げた売上ランキングから上位10名のデビュー年齢をまとめてみよう。デビューの定義は「商業誌に初掲載」とし、誕生日は考慮しない単純な引き算(掲載年-誕生年)で考える。

・尾田栄一郎:18歳 代表作『ONE PIECE』
・岸本斉史:24歳 代表作『NARUTO』
・椎名軽穂:16歳 代表作『君に届け』
・真島ヒロ:21歳 代表作『RAVE』『FAIRY TAIL』
・久保帯人:19歳 代表作『BLEACH』
・小畑健:20歳 代表作『DEATH NOTE』『バクマン。』
・空知英秋:23歳 代表作『銀魂』
・荒川弘:26歳 代表作『鋼の錬金術師』『銀の匙』
・中村光:17歳 代表作『聖☆おにいさん』『荒川アンダー ザ ブリッジ』
・椎橋寛:22歳 代表作『ぬらりひょんの孫』

こうして並べてみると、メディアミックスされた売れ筋タイトルの作者は揃って早熟傾向にあることがわかる。10人中7人が四年制大学でいえば新卒の年齢(22歳)までにデビューしているとは驚きだ。

早めの漫画家デビューが良いとされている理由には諸説あり、個人的に納得できたものを以下に挙げる。

・若い読者層に感性が近い
・編集者が育てて成長させられる「伸びしろ」が多い
・ほぼ座りっぱなし、徹夜もありの仕事なので高齢だとつらい
・漫画家の道を諦めても若ければ別の仕事を探しやすい

やはり腕や目、腰などを酷使する職業のため、第一線で長年プロをやっている作家(仕事量が多い)ほど体にダメージが残りやすいのは想像に難くない。たとえば『北斗の拳』の原哲夫氏は、視力悪化により一時期引退も考えたそうだ。また、そこまで深刻でなくても、お気に入りの漫画家が単行本のコメント欄で「デビューしてから体重が○キロ増えた」「外に出なくなった」など自嘲気味につぶやくのを読んだことがある人も多いはず。『こち亀』の秋本治氏や『ジョジョ』の荒木飛呂彦氏のように、節制を心がけながら長期にわたって安定した執筆ペースを続けられるというのは、それだけでものすごいことなのだ。

なお最年少デビューが何歳なのか調べてみたところ、13歳という記録が見つかった。『月光仮面』『8マン』などを描いた桑田二郎氏で、デビューは終戦間もない1948年だ。漫画業界の仕組みが今のようになってからは、『B.B.フィッシュ』『ホットマン』などで知られる、きたがわ翔氏が最年少候補に挙がる。1981年に商業誌へ初めて掲載されたデビュー作『番長くんはごきげんななめ』を描いたのが13歳の時。これまた早熟な漫画家である。