●豆腐屋でのアルバイトなど、はじめてのことに挑戦!

自分の存在をタレこみされても怒ることなく、淡々と計画を進めていくモモ。その瞳にはまるで最期を予感しているかのような、美しい諦念ともいうべきものが宿っています。

かりそめかもしれないけれど、はじめて手に入れた誰に命令されたわけでもない仲間たちとの暮らし。そのなかには「ダイナマイトは甲子園いっぱいぶん用意して」とわかりづらい冗談を言うシーンや、キッチンに立って網で肉を焼いたり、強奪計画で着るお揃いの作業着を縫うためにミシンを踏むシーンも(しかもかなり手馴れている)! PVなどで銃を手にするシーンはこれまでも披露していましたが、この映画では様々な“はじめての表情”を見せてくれています。100人いれば萌えポイントも100通り。作り手側が意図していたかどうかに関わらず、きっといくつもの萌えが見つかるはずです。

幸田と再会するアルバイト先の豆腐屋では頭にタオル、首元の伸びた地味なブルーのTシャツで豆腐をすくうモモチャンミン! とりあえず、買い物をしにきた主婦のセリフ「あんた、豆腐屋もったいないわ」に首がもげるほどうなずいてしまう人は多いのではないでしょうか。

●気になる“あのシーン”は……

“絆”と呼ぶにはあまりにも脆い関係性。犯罪のリアリティを追求したからこそ、痛快とは言い難いやるせないラスト。映画が終わったあと、時間差で胸に迫ってくる男たちの刹那のきらめき。『黄金を抱いて翔べ』はときに飄々としたユーモアを織り込みながら、忘れがたい余韻を残すサスペンス映画として完成しました。
この映画のなかにはドラマ『パラダイス牧場』のワガママで可愛いキラキラ御曹司なチャンミンも、ドSを装ったファンサービスによって何万人もの人々を絶叫の渦に巻き込むステージ上のチャンミンはどこにもいません。あらゆるものを痩せた背中とほっそりと滑らかな肩に背負った“たまたまハンサムに生まれてきてしまった北の工作員”がいるだけです。ちなみに浅野忠信とともにトラックのなかである歌を口ずさむシーンがあるのですが、さすがに上手だったのはご愛嬌。

そして最後に! 原作を読んだ方なら絶対に気になっているであろう、そして期待値MAXであろう“あのシーン”、……ちゃんとありますのでご安心ください!!

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関連リサーチ
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【関連サイト】
『黄金を抱いて翔べ』公式サイト[ https://www.ougon-movie.jp/ ]

ほそや・みか  情報誌の編集者を経て映画ライターに。「FRaU」「In Red」「marisol」などの女性誌を中心に、ハリウッドからアジア、日本まで幅広く映画紹介や俳優、監督のインタビューなどを担当している。好きなジャンルはラブコメディと青春映画。