DCエクステンデッド・ユニバースの9作目となる『ワンダーウーマン 1984』が、12月18日から公開される。今年の年末年始に唯一公開されるハリウッド製のアクション大作だ。
前作『ワンダーウーマン』(17)の舞台は第一次世界大戦中だったが、今回の舞台は1984年。パティ・ジェンキンス監督は「観客に、80年代の映画を見ているような気分になってほしかったから、スタントや戦闘シーンはほとんど実際にやった」と語っている。
今回のダイアナ=ワンダーウーマン(ガル・ガドット)の敵は、全ての願い事をかなえる、いわゆる“猿の手”を手に入れたマックス(ペドロ・パスカル)と、ダイアナへの憧れが転じて敵となるバーバラ(クリスティン・ウィグ)だ。
2人が心に抱える闇(移民、差別、コンプレックス)が悪のエネルギーになるところが示唆に富んでいるし、それに対するダイアナも、ヒーローと一人の女性としての立場の違いから、いろいろと葛藤する様子が描かれる。DCのヒーローは、スーパーマンもバットマンも、皆悩むのが特徴だが、ワンダーウーマンとて例外ではない。
さて、今回の見どころの一つは、前作で死んだダイアナの恋人スティーブ(クリス・パイン)を、どうやって再登場させたかというところだが、実はここにもダブルミーニングがひそんでおり、ダイアナの葛藤の原因ともなる。
とは言え、本作の主役はあくまでもダイアナ=ワンダーウーマンで、スティーブはサブキャラクター的なポジションにある。これは一昔前のヒーロー物では考えられなかったこと。それを監督したジェンキンスも女性だ。これはジェンダー平等の精神が反映された結果だとも言えるだろう。
イスラエル出身でモデルでもあるガドットは、軍隊に所属していたこともあるというから筋金入りのワンダーウーマン。欧米では圧倒的に女性ファンが多いのだとか。
前作の公開後、例えば、『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』(20)に主演したマーゴット・ロビーは、インタビューで「今までは、女性が主役のアクション映画があまりなかったから、『ワンダーウーマン』を見て、映画館から出てきたときは、自分がとても強く大きくなったような気がして、すっきりしていい気分になった」と語った。
一方、『ジャスティス・リーグ』(17)のフラッシュ役でガドットと共演したエズラ・ミラーも「子どもの頃からバットマンが一番好きだったけど、今はワンダーウーマンに変わった。ガル・ガドットが見事に演じて、今までとは全く違うキャラクターを生み出した。彼女のワンダーウーマンは本当にすごい。映画史に残ると思う」と語っていた。
今回は、そうした女性の強さに加えて、葛藤を描き込んだことで、さらに深みを持った作品に仕上がっている。(田中雄二)