クランシー役の村井良大 (スタイリスト:吉田ナオキ/ヘアメイク:山下由花)

 米国を代表する喜劇作家ニール・サイモンのハートフルコメディー「ローズのジレンマ」が、大地真央を主演に迎え、2021年2月6日から上演される。本作は、大物女流作家のローズが、最愛のパートナーだった作家ウォルシュの亡霊に提案され、助手のアーリーンや売れない作家クランシーと共に、彼の未完の遺作を仕上げる中で、残された人生と向かい合うさまをユーモラスに描いた作品。クランシー役を演じる村井良大に、役への思いを聞くとともに、2020年を振り返ってもらった。

-大地真央さん、神田沙也加さん、別所哲也さんとの4人芝居でつづられるコメディーです。出演が決まって、どんな気持ちでしたか。

 うれしかったです。ワンシチュエーションの4人芝居は、大抵の作品が面白いと僕は思っているので(笑)、この作品もきっと素晴らしいものになると思っています。それに、豪華な共演者の方々とご一緒できるので、濃厚な時間を過ごせそうだとワクワクしています。

-台本を読んだ感想は?

 読んでいるだけでも笑ってしまって、ギミックの面白さを存分に生かして作られている作品だと感じました。「ローズのジレンマ」というタイトルの通り、ローズの心の中で揺れ動く気持ちを感じるとより楽しんでいただける作品になると思うので、大地さんがどのように演じられるのか、僕も今から楽しみです。

-村井さんが演じるクランシーという役柄については、台本を読んだ時点ではどんな人物だと感じましたか。

 ボロボロの汚い格好をして、スニーカーで、いかにも「アメリカの田舎から来ました」という見た目の青年です。ひげを生やして、髪の毛もボサボサで、「ザ・駄目男」といった印象があります。台本の中にウォルシュの「汚い服を着て、芸術家っぽく見せている」というせりふがあるのですが、その言葉通りの分かりやすい人物だと思います。ただ、物語が進んでいくと、頭が良くて、本を愛していることが伝わってきて、作家としては才能があることが分かってきます。人を見た目で判断してはいけないということを体現しているかのような男性です(笑)。とはいえ、危険な香りがする人なので、正直、僕で大丈夫かなという不安はありますが。

-確かに、クランシーは村井さんのイメージとはかけ離れた役柄ですね。

 眉毛を全部そるぐらいの気持ちで臨まないと駄目かなと思ったりしています(笑)。今まであまり演じたことがないキャラクターなので、どうなるか僕自身も楽しみです。

-演出の小山ゆうなさんとはすでに何か話はしましたか。

 まだ深いお話はできていません。ですが、この作品は、台本も難しく、どう演出するかによっても印象が変わる作品だと思うので、いろいろとお話を聞かせていただければと思っています。今回、僕が台本を読んですごく興味を引かれたのは、「暗転」という言葉のほかに、「溶暗」という言葉がト書きに書いてあることでした。「溶暗」は、じょじょに暗くなっていくということだと思いますが、それをどのように演出されるのかと期待しています。

-共演の大地さん、別所さん、神田さんの印象を教えてください。

 皆さん、初めましてなので、お稽古をする中で印象も変わってくるかとは思いますが、大地さんはりんとして、気品が漂うすてきな方だと思っています。きっとコメディーがお好きな方なのではないかなと僕は思っています。別所さんは、男らしさがあふれ出ているダンディーな方。渋い役柄がとても似合う方ですが、今回は、一人で突っ走っているような役柄なので、どんなお姿が見られるのか楽しみです。あのダンディーな別所さんが、かわいく見えるんじゃないかなと思っています。神田さんは、アーリーンという役柄にぴったりだと思います。献身的に尽くして、ローズを支える姿が絵として浮かびます。アーリーンは女性としての芯の強さも持つキャラクターだと思いますが、そういう意味でも神田さんはアーリーンにはぴったりなのではないでしょうか。

-「大地さんはコメディーがお好きなのでは」という言葉がありましたが、村井さんはいかがですか。

 大好きです! ただ、コメディー作品はやはりすごく難しいとは思っています。笑いを狙いにいってしまったら面白くないし、お客さまがどこで笑うのかも、実際にお客さまの前で演じてみないと分からないので、日々、調整していかなければいけない。そういった難しさはありますが、今は特に、見た後に明るい気持ちで帰れるように、笑える作品をお届けしたいと思っているので、ぜひ楽しんでいただけたらと思います。

-改めて、2020年を振り返ってみて、どんなことを感じましたか。

 皆さんが大変な思いを抱えた1年だったと思います。僕も、精神的に忙しかった1年でした。いろいろな情報が毎日入ってきて、それに対応し続けて…、先行きが見えない不安な状態でもやるしかない。その大変さを実感しました。でも、僕は幸運だったと思います。(2020年1月20日から3月8日に上演予定だった)「デスノート THE MUSICAL」が新型コロナウイルスの影響で、千秋楽を迎えることなく上演中止になってしまいましたが、それでも東京と静岡公演は上演することができました。初日を迎えることができずに、中止となってしまった作品がたくさんある中で、公演数が減ってしまったとしても、お客さまの前で上演できたことはとてもありがたいことだったと思います。もちろん、先日、千秋楽を迎えたミュージカル「生きる」も、無事に完走できたことはとても幸せなことだと、改めて思っています。

-2021年はどんな年にしたいですか。

 目の前のことに、とにかく全力投球していきたいと思います。こういう仕事をしていると、(年明けのスケジュールが決まっていることもあるので)あまり新年の目標を立てるということもないのですが、その時、その時に与えられたものに、全力で挑んで、今を大事にしていきたいと思います。

(取材・文・写真/嶋田真己)

 「ローズのジレンマ」は、2月6日~25日に都内・シアタークリエで上演。
公式サイト https://www.tohostage.com/rose/