人気ゆえの風評被害もあった。連載終了ほどなくして未成年者による凶悪犯罪が起きたとき、たまたま犯人の自宅に『寄生獣』があったことが報じられ、妙な形で話題になってしまった。

同じような被害は『ひぐらしのなく頃に』『トライガン』『魔人探偵脳噛ネウロ』なども受けており、事件が起きると率先してアニメや漫画を叩きにいくマスコミの体質は当時も今も変わっていないらしい。
 

映画『寄生獣』主要キャスト

なお、今回の実写化発表への反応をネットで調べた限り、ファンの反応はやや不安が混じったもののようだ。

小説や漫画のアニメ化はまだしも、実写化は当たり外れが激しく『変態仮面』のように原作愛があふれて好評だったタイトルもあれば、『デビルマン』や最近でいえば『ガッチャマン』のように「どうしてこうなった…」と言いたくなるようなタイトルも目立つ。

たしかに原作ストーリーを無視してCG満載の単なるバトル作品になりそうなハリウッド版『寄生獣』を見なくて済んだのは朗報だが、日本での実写化もスポンサー側の意向でどう改変させられるか未知数。漫画原作である『三丁目の夕日』をたくみに実写化した山崎貴監督の手腕に期待させてもらいたい。

 

これも必読!『寄生獣』前後の岩明作品

最近は『ヒストリエ』で再び受賞ラッシュの岩明均氏だが、ここではあえて『寄生獣』前後の少し古いタイトルを2つ紹介したい。

まずは短編集『骨の音』。デビュー作『ゴミの海』から表題作『骨の音』まで、初期の短編6タイトルを収録。すべて独立したエピソードだが、現代日本が舞台であることと、心の壊れた女性キャラが多く登場するという共通点がある。のちの『寄生獣』では一部を除いて比較的パターン通りの女性キャラが多かったため、逆に新鮮さを感じる。

さすがに最初期だけあって話をうまく畳めていないものもあるが、わずかなセリフや表情で多くを想像させる才能は十分に感じられる。また、生きた人間のことを「肉の塊」と表現するなど『寄生獣』の原型になった言いまわし、キャラクター描写も多い。
 

もう1つのオススメは『七夕の国』。『寄生獣』の次に描かれた作品で、全4巻と手頃なボリュームにまとまっている。

イケメンに成長した『寄生獣』の新一と違い、こちらの主人公・南丸はぼんやりした大学四回生。まれに異能者が生まれる「丸神の里」の血を引く彼には、薄い紙やガラスコップに小さな穴を開けるというささやかな超能力があった。

同じく丸神の里に関わる大学教授が行方不明となったころ、世間では“謎の力”による殺人事件が頻発。ゼミの人々に協力して教授の行方を探し始めた南丸は、やがて自分の能力がどんな意味をもつのか、そして「丸神の里」に関わる伝承の真相を知っていくのだった――。

死体がゴロゴロ出てきたり、人を超えた能力が登場したり、『七夕の国』も一見すると『寄生獣』に似たイメージを受けるが、まったくの別物。日本の民俗学をうまく練り込んだミステリー色が強めのストーリーだ。

本気になれば手も触れず人を殺せるキャラが主人公を含め複数登場するが、大規模なバトルはただ1度だけ。しかも主人公は一切参加していない。あくまで主題は「丸神の里」にまつわる謎と、サブテーマの“人を超えた力を与えられた者はどう受け取ればいいのか?”に集約される。
 

『寄生獣』の実績により打ち切りの心配がなくなったためか、本作は第1話から大胆に伏線を盛りこんでいるのが特徴。まったく無関係に見えたあらゆる要素がラスト付近で見事につながる。『七夕の国』という作品タイトルから謎の核心を推理できた読者も多いと思うが、それが分かっていても感心せずにはいられない物語の展開がすばらしい。

ちなみに『骨の音』『七夕の国』とも新装版・完全版が発売されているので、現在でも入手は難しくない。『ヒストリエ』『寄生獣』で岩明ワールドにハマった人は、ぜひご一読を。

 

映画『寄生獣』
2014年12月PART1、2015年PART2、全国東宝系にて公開
[http://kiseiju.com/]

 

 

 

 

パソコン誌の編集者を経てフリーランス。執筆範囲はエンタメから法律、IT、教育、裏社会、ソシャゲまで硬軟いろいろ。最近の関心はダイエット、アンチエイジング。ねこだいすき。

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