「大久保は川崎フロンターレで、プレーに120%くらい自由を与えられています。

トップ下やボランチの辺りにプレーエリアを落としたら、『じゃあ、僕が飛び出しますよ』という選手(中村憲剛など)がいるからフロンターレは機能しています。大久保がトップ下に降りてきた場合、本田はセンターFWになれるかと言うと、そうではありません。香川のほうがその役割をスムーズにこなせると思います。

交代のファーストチョイスが大久保なら、香川がトップ下というイメージを持っていますね」

では、1トップは大久保、トップ下を香川とした場合、本田の起用法はどうなるのか。

名波氏は、「ザッケローニ監督は考えていないと思いますが」と断った上で、ボランチへの配置を提案する。遠藤保仁に代えて本田を中盤の下がり目の位置で起用し、サイドアタッカーとして清武弘嗣、齋藤学といった個人技のある選手を投入すれば、状況打開のチャンスが見えてくる。

「本田はパスをさばけますし、自分でドリブルしてボールを前に運ぶことで、相手のマークが本田に集まってくる。ということは、周りの選手のスペースが空いてきます。だから清武や齋藤学のドリブル、香川と大久保のポジションチェンジも活きてくる。おもしろいアイディアが、アタッキングエリアでできるのではないかと思っています」


想像や妄想を膨らませるのは楽しい一方、現実も気になるところだ。

ケガから回復して間もない内田篤人、吉田麻也、長谷部誠は、どこまでコンディショニングを上げてくるのか。W杯前に最後に日本で行われる5月27日のキプロス戦で、それを見分けるポイントについて名波氏が教えてくれた。

 

「プレーの選択肢として、常に前を向いてプレーしようとしているか。ここに注目してください。

その見方が難しいと言うなら、いかに敵陣ゴールに体が向いているか。特に、ボールをもらう前。常に後ろに選択肢を持っているようだと、相手を怖がっている。相手のプレッシャーのスピードが、自分の予測より速いということです。

これがいわゆる、『ゲーム感覚がない』という状態。普段の紅白戦と、5、6万人のファンが入ったスタジアムでプレーするのは、まったく違います。心理的な部分も含めたコンディショニングに注目してください」

はたして、日本代表はブラジルの地でどこまで勝ち進むことができるだろうか。現実を注視しつつ、想像や妄想を膨らませておくことで、W杯を格段に楽しむことができる。


●名波氏の予想スタメン

4−2−3−1

         大迫
  香川     本田     岡崎
     遠藤     長谷部

 長友  今野     吉田   内田
         川島

 

「サッカー日本代表戦応援イベント」では、通常の日本代表戦でスタジアムのサポーター席に掲げられるジャイアントジャージが芝生会場に設置され、賑わった。ジャージはW杯を戦うブラジルの会場に届けられる。

 

 1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライターとして活動。05年夏から4年間、英国でセルティックの中村俊輔を密着取材。現在は野球を中心に執筆。『東洋経済オンライン』で「野球界に見る、凡才がトップに登り詰める方法」を連載。著書に『人を育てる名監督の教え すべての組織は野球に通ず』(双葉新書)がある。