ライブに躍動感をあたえる、SMAPの「予測不可能感」

<誰か Mr.Sを知ってるかい>

そんな意味深なフレーズで始まるアルバム『Mr.S』は、SMAPとしては久々にコンセプチュアルな内容となっています。SMAPのアルバムは毎回作品タイトルとして大まかなテーマはあるものの、ここまで明確なテーマがあるのは、1999年のアルバム『BIRDMAN~SMAP013』以来かと。

また、本編+メンバーソロという分け方じゃなく、“colorful”と“monochrome”という明確なコンセプトで分けられた2枚組の形式は、長いSMAPの歴史のなかでもはじめての試み。「最低で最高の男」というコピーやアートワークからはどこか“オトナな男の余裕”を感じさせますが、SMAPというチームとしてみると、実はかなり攻めている内容なのです。そんな攻めの姿勢は、ツアーにも反映されています。

まず感じたのは、これまでのライブに比べて「アドリブ要素」が多いこと。例えば今回、ある方法で次に歌う楽曲をランダムに選曲する演出が用意されていました。観客へのサプライズという意味では前回ツアーの「GIFT曲コーナー」にも通じますが、今回はメンバーもその場で歌う曲を知ることになるため、イントロ中に立ち位置を固めて(固めきれていないメンバーも 笑)あたふたしながら歌い出すという、なかなか見られない光景が見られました。

これ、単純にコンサートとしての完成度を高めるのであれば、不必要な演出でしょう。この演出をあえて組み込んだということは、5人が意図的に「事故」を起こそうとしているんだと思うのです。

『5人旅』と『27時間テレビ』を見た人ならわかると思いますが、SMAPは5人揃うと異様なまでの“予測不可能感”を発揮します。5人だけで同じ車に乗りこんだときや、番組終盤に5人だけでスタジオに残されたときの、これから何が起きるんだろう……という、不穏とも言える空気。これだけ顔も名前もキャラクターも知られているグループなのに、“5人だけになったときがもっとも何をしでかすかわからない”ということ自体が、もはやSMAPの魅力のひとつといっていいでしょう。

今回のライブにおけるさまざまな「事故」は、『5人旅』と『27時間テレビ』で再発見されたSMAPの“予測不可能感”を、コンサートの場で再現するチャレンジなのではないでしょうか。その試みは大成功で、隅々まで構築されたエンタテインメント・ショーのなかに、生々しい躍動感を生んでいました。