ツートップがライブで見せた、それぞれの表情

稲垣、草なぎ、香取の3人がボーカリストとしての個性をより発揮する一方、ツートップである中居正広と木村拓哉は、また違った表情を見せていました。

 

木村のソロ『One Chance!』は、ドラマ『HERO』で共演した森山直太朗の作によるもの。一聴するとこれまでのソロ曲にも通じる得意のミディアムチューンですが、流れている空気感には変化を感じます。ここで思い出したのが、『5人旅』のなかで、5人でカラオケをするシーン。

あのときの木村はほとんど言葉らしい言葉を発することもなく、周りで酔い歌い笑い泣くメンバーを、ただ微笑んで眺めていました。なんかあの丸腰な「ただここにいる」という感じが、今回のソロにはある気がしました。ライブでただここに立ちうたわれる木村の歌は、これまでに聴いたことがないほど凛々しくて、優しいものでした。
 

中居には今回ソロ曲がありません。ということは観客はコンサートのあいだ、常に「SMAPの中の中居正広」を観ることになります。それぞれに変化を迎えている4人のあいだで、中居は変わらぬプロフェッショナリズムをまとい、SMAPの一員である自分を全うしているように感じました。つまりそこにいたのは、いつも通りの中居だったのです。

そのことは逆説的に“SMAPにおける中居正広という存在のでかさ”を物語っていました。中居が中居でいてくれることが、どれだけSMAPにとって支えとなっているか。今回のツアーでは彼がSMAPのリーダーである理由を、さまざまな場面で痛感させられました。
 

そんなふたりに対して、実は個人的に共通して感じるものがありました。ちょっと語弊があるかもしれませんが、どこか「委ねている」感じがしたんです。誰に、なにに、なにを委ねているのか。明確なことまではわかりませんでしたが。

ただ、年長組として常に何かを背負い続けてきた中居と木村がいま、ある種の「軽やかさ」をみせていること。そして稲垣、草なぎ、香取の3人がツートップのそばで力強い歌声を響かせていること。このバランスがいまのSMAPを未知の世界へと走らせていると感じました。

このバランスがこの日だけのものだったのか、いまのSMAP自体に言えるものなのか、はたまた自分の思い込み/勘違いなのかは、わかりません。ただ少なくとも自分はこの日、これまで見たことがないSMAPに出会った気がしました。そういえばこの日、最後に中居と木村が手を繋いで挨拶をするという「あまり見たことがないツートップ」の姿があったことも付け加えておきます。