立川理道(クボタスピアーズ)

クボタスピアーズの初の4強入りは何ら不思議ではない。神戸製鋼コベルコスティーラーズのリーグ24戦負けなしが止まったのも驚きではない。だが、しかし、ひとり少ないクボタが神戸製鋼に勝ち切るとは思わなかった。しかも、SH井上大介が体調不良で急遽メンバーを外れ、前半29分にSOバーナード・フォーリーを一発退場で欠いてなお、クボタがトップ4入りを果たすとは正直読めなかった。

ジャイアントキリングは驚きではあったが、必然だった。5月9日『ジャパンラグビー トップリーグ2021』プレーオフトーナメント準々決勝のピッチでクボタは勝利にふさわしいパフォーマンスを披露。ふわっと試合に入った神戸製鋼に対し、クボタはキックオフからエンジン全開、出足の鋭さで主導権を握る。3・9分と立て続けにトライを奪い、24分にはフォーリーのPGで17-0とゲームを支配する。一方、神戸製鋼はクボタのプレッシャーにさらされ、ノックオンやスローフォワードなどハンドリングエラーを連発し、チャンスを潰した。

元豪州代表司令塔が退場となってからクボタはさらにギアを上げる。神戸製鋼の連続攻撃に食らい付き、ゴールラインだけは何とか割らせない粘りのディフェンスを繰り広げた。それでも、前半終了間際についにトライを許す。

後半21分には日本代表候補のWTBゲラード・ファンデンヒーファーのPGで加点するも、神鋼は残り20分の勝負どころを逃さなかった。後半23に途中出場の元NZ代表SOアーロン・クルーデンが抜け出しトライにつなげると、30分には味方が蹴ったボールをWTB山下楽平が走り勝ちトライ。クルーデンがふたつのコンバージョンも成功させ、ついに神戸製鋼が21-20と逆転した。

エコパスタジアムに「クボタの粘りもここまでか……」というムードが漂い始めるも、ピッチ上の “クボタフォーティーン”は諦めていなかった。残りわずかなガソリンとエナジーを注ぎ込み、神鋼陣内に攻め入ると、22mライン右側でペナルティを獲得。ファンデンヒーファーがPGを見事に決めて23-21と逆転。残り4分、クボタは泥臭く体を投げ出して時間を稼ぎ、ノーサイドの笛を聞いたのだった。

試合後、フラン・ルディケHCが「14人が同じ絵を見ていた、立川もやるべきことをわかっていた」と主将のゲームコントロールを称えれば、そのCTB立川理道は「キーマンの10番がいないのはきつかったが、FWのがんばりで14人でもうまく戦えた」とFW陣を称賛した。さらに主将は「ここで終わりではない。サントリー戦に向けてしっかり準備したい」と次を見据えた。未知の領域に踏み込んだクボタの冒険はまだまだ続く。

『第58回日本ラグビーフットボール選手権大会』兼『トップリーグ2021』プレーオフ準決勝・サントリーサンゴリアス戦は5月16日(日)・東大阪市花園ラグビー場にてキックオフ。試合は無観客で開催。試合の模様はNHK総合にて生中継。