条件を全て満たすと、最大100万円の移住支援金がもらえる埼玉県の「移住就業等支援金支給事業」の対象9自治体で、飯能(はんのう)市だけJR山手線のターミナル駅・池袋に飯能駅から特急を利用して最短39分で着く近さだ。そこまで東京都心に近いにもかかわらず、市全体の人口減少が続き、「移住促進エリア」となってしまったのか。首都圏内の郊外移住の候補として気になる人も増えていると思われる、飯能・東飯能の魅力を紹介したい。 なお、2021年4月1日以降、支給条件が大幅に緩和された移住就業等支援金支給事業については、こちらの記事(https://www.bcnretail.com/market/detail/20210519_226202.html)を参照していただきたい。
森林が75%を占める 少ない市街地ゾーンは東京都心に毎日通勤可
飯能市は、2005年に名栗村(58.56平方キロメートル)と合併したこともあり、現在の市域は193.05平方キロメートルと広い。また、東京都青梅市と隣接しており、車で20分ほど走ると東京都だ。しかし、中学校3年生までの小児医療費助成の窓口負担なしの対象は、隣接する日高市・飯能市の2市のみで、東京都内や埼玉県内の他自治体の医療機関は還付申請が必要となるため、実は使い勝手はよくない。
広い市域の約75%を森林が占め、住宅地・商業地のほか、農地や区画整理中の道路予定地も多い。どの地区に移住するかによって「年に数回しか出社しない田舎暮らし」「週1~2回に出勤するリモートワーク」「毎日出勤する通勤スタイル」のどれがベストか変わる。同じ市内に本物の田舎がある、この多様さが魅力といえるだろう。
一般的にイメージされる飯能は、西武池袋線の始発駅・特急停車駅である飯能駅周辺と、その飯能駅まで路線バスが運行する美杉台ニュータウンである。しかし、車通勤または、朝2便・夜1便(2021年3月14日ダイヤ改正)の八高線~青梅線~中央線快速直通の東京駅行き・東京駅始発高麗川行きを利用するなら、市役所最寄りのJR東飯能駅周辺のほうが便利。地元民のおすすめはJR東飯能駅周辺、特に2線利用可の範囲だ。
JR東飯能駅発・東京駅行きは、朝7時6分に発車し、8時43分に東京駅に到着する。帰りは東京駅19時25分発・20時50分着(所要時間85分・IC運賃1166円)。実のところ、飯能駅まで歩いて、そこから西武池袋線に乗車して池袋駅で乗り換えて東京メトロ丸の内線を利用したほうが所要時間は短いが、朝晩の通勤ラッシュ時間帯に混雑する池袋駅を回避できるメリットがある。しかも直通のため、乗り換えは1回もない。懸念点は今後のダイヤ改正でなくなる可能性があること。実際、東京駅発の直通は以前より本数が減っている。
東飯能駅周辺がおすすめの理由は、複数の認可保育園、ドラッグストア、チェーン店、コンビニなど、一通りの店が揃った生活のしやすさだ。また、市内を東西に貫く国道299号線・そのバイパス線を利用して圏央道(首都圏中央連絡自動車道)の入間IC・狭山日高ICに行きやすく、圏央道を南方向に進むと湘南・茅ヶ崎海岸まで平常時は1時間半以内に着く。圏央道経由で、関越自動車道・東北自動車道・東名高速道路にもアクセスしやすい。休みのたびの高速ドライブにはうってつけの立地だ。
主な観光スポットは、北欧の雰囲気が味わえる湖畔の「メッツァ(国内初のムーミンのテーマパークのムーミンバレーパーク+メッツァビレッジ)」、ムーミンバレーパーク誘致のきっかけとなった「トーベ・ヤンソンあけぼの子どもの森公園」、アニメ・コミック『ヤマノススメ』で注目された「天覧山」など。
飲食店は豊富とは言えないが、チェーン店を中心にそこそこある。また、飯能駅直結の駅ビル「西武飯能PePe(ペペ)」とメッツァビレッジの市内2カ所にスターバックスコーヒーがあり、さらに今年3月、狭山市の入間川河川敷に開放的な新店舗がオープンした。公式サイトに記載はないが、飲食デリバリーサービス「Uber Eats」も、今年4月から市内の一部でスタート。インターネットを使いこなせる若い世代なら、ECと飲食デリバリーを活用して割と便利に暮らせるだろう。
同じ西武池袋線でも、石神井公園より所沢、所沢より狭山ヶ丘(所沢市)や武蔵藤沢(入間市)と、距離が遠く、急行・Fライナーが停車しない各駅停車駅ほど、コスパが高まっていく。ここでいうコスパとは、賃貸の家賃または建売住宅・土地+注文住宅新築時の住宅ローン負担額である。しかも、飯能駅は始発駅(急行・特急停車駅)のため確実に着席通勤が可能で、隣駅の元加治駅(各駅停車駅)でも着席可能だ。なお、飯能市内は新築マンションの供給が長らく途絶えており、マンションは賃貸か築古の中古物件に限られる。
身近に自然・田舎(森林・湖・畑)の雰囲気を感じながら、電車に乗れば、東京都内有数の繁華街、池袋や新宿に最短60~70分程度、横浜・みなとみらいにも乗り換えなしで最短90分程度で着く(路線図上のつながりにとどまらず、飯能市は2014年に横浜市中区と友好交流協定を締結し、市民・行政レベルの交流を目指している)。飯能駅・JR東飯能駅周辺は、リモートワークが認められず毎日都内の会社に出勤しなければならない会社員にも、リモートワーカーにも住みやすいコスパのいい街といえるだろう。