グラフィティ、ラップ、ブレイキング…1981〜83年に製作され、当時生まれたばかりの “ヒップホップ”をフィルムに捉えた貴重なドキュメンタリー映画『Style Wars』が、PIA LIVE STREAMにて期間限定配信されることが決定した。

『Wild Style』(1982)とともに、ヒップホップヘッズのバイブルとして語り継がれ、日本でもビデオやDVDがリリースされたものの長く廃盤となっていた本作。2015年にプロデューサーで写真家のヘンリー・シャルファントらがクラウドファンディングを行い、オリジナルネガから修復したHDリマスター版が完成した。

1970〜1980年代、レーガン大統領ですら視察の際に絶句したといわれるほど、がれきの山が延々と続き、貧困と犯罪が蔓延していたブロンクス地区。しかし、そんな灰色の町から全く新しいサブカルチャー、ヒップホップが生まれる。無数のグラフィティを描く少年たちはライターと呼ばれ、彼らが”グラフィティ”を街中に描くことは自身の存在を”ボム(=爆破)”することを意味していた。インターネットなど存在しない当時、閉塞感を抱えた少年たちは、地下鉄のホームに集まっては自身のタグを競うように発明し、終電後の車庫に忍び込み、NY中を駆ける地下鉄の壁に自身の証を記した。

トニー・シルバー監督は本作の魅力をこう語る。「グラフィティについて、色々なパラドックスが存在する。社会にとっていいか悪いか、子どもがやるのはいいことか悪いことか、複雑にもつれてほどけないパラドックスだ。そして、そのパラドックスこそがこの作品の最も素晴らしいところになった。映画では善悪を判断することはしない。ありのままを見せるだけ。どちらか一方に偏ることはない。そこが、詩的で、美しいのだ。」

”グラフィティ”を「落書き」として糾弾する大人たちの批判を受けながらも、言葉にならない衝動に突き動かされる少年たち。フィルムが捉えた彼らの瑞々しい姿と新しいムーブメントが生まれようとする時代の空気は、製作から約40年が経った今、観る者に新鮮な驚きをもたらしてくれるだろう。

視聴期間は6月25日(金)から7月1日(木)まで、PIA LIVE STREAMにて。チケット発売中。