スチャダラパー ――不惑を過ぎた3人だからこそ紡げるメッセージ
イベントもいよいよ終盤、トリ前に登場したのはスチャダラパー。結成は‘88年、キャリア的には大ベテランなわけですが、彼らが大物風を吹かすはずもなく、BOSEは「前の方にチラホラいるだけかと思ってたけど、こんなにお客さん残っててくれて嬉しいね!」とのっけから自虐的なMCで会場を和ませます。筋少といいスチャといい、ベテラン勢がみせる絶妙なさじ加減の「自虐」のおかげで、彼らを深く知らない若い世代の心を自然とつかむことができる。MCひとつとっても、長きにわたってステージに立ち続けてきたエンタテイナーとしての技を感じます。
そのバランス感覚は彼らの音楽にも表れています。スチャダラパーの音楽をカテゴライズするなら間違いなくHIP-HOPですが、HIP-HOPのパブリックイメージである「俺が俺が」と矢継ぎ早にライムを繰り出すようなマッチョさは皆無。常に自らを俯瞰するような客観的視点とひとさじのユーモアによって生まれるライムと、決して押し付けがましくないが揺るがない個性が刻まれたスマートかつタイトなビートが融合し、みるみるオーディエンスの体を揺らしていく様は超クール! 『ポンキッキーズ』でおなじみのコーラスで会場を沸かせた『GET UP AND DANCE』に象徴されるように、聴き手を選ばない親しみやすさもスチャの大きな武器のひとつです。
この日はそんなスチャおなじみの表情に加え、キャリア後期の楽曲で聴くことができる別の顔も見え隠れ。シビアに現状を見つめる視線、変わりゆく世の中への期待と諦め、その奥から燃え上がる「でもやるんだよ!」精神――そんな不惑を過ぎた3人だからこそ紡げるメッセージに、思わずグッときてしまいました。ゆるゆるとマイペースで活動してるように見える彼ら、その「ゆるゆる」の裏にあるしなやかなタフネスを再確認させられた50分でした。で、ラストの『今夜はブギー・バックfeat.星野 源』は、もう、最高としか言いようがなかった……! このイベントならではの最高のサプライズでした。
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この日のライブにも参加したロボ宙、そしてSLY MANGOOSEとの10人組バンド・THE HELLO WORKSによる年末恒例ライブ「PAY DAY」も無事終了したスチャダラパー。彼らのONLINE STOREでは、この日も披露された『哀しみturn it up c/w Boo-Wee Dance』のシングルや、自ら編集を務める雑誌『余談』などを販売中です。
<SETLIST> 1.MORE FUN-KEY-WORD 2.ライツカメラアクション 3.後者-THE LATER- 4.GET UP AND DANCE 5.Station to Station 6.Good Old Future 7.哀しみturn it up 8.CHECK THE WORD 9.Boo-Wee Dance 10.LET IT FLOW AGAIN 11.今夜はブギー・バック