岡村靖幸 ――どこまでも異端で異形のエンタテイナー
午前中から続いてきたイベントも、次でいよいよラスト。大トリは岡村靖幸の登場です。実は2007年に行われた前回の『MUSIC COMPLEX』でもトリを務めてくれた岡村ちゃん。5年経って再びフェスの締めに登場するという事実が感慨深いです。ステージには大所帯のバンドメンバーが揃い、重厚なダンスビートを刻みます。音が、重い……! 筋肉少女帯やマキシマム ザ ホルモンの重さとはまた別種の、腰にズシンッと絡みつくようなうねるビートに、この長丁場ですでに限界を迎えていた足腰が勝手にグラグラ動いて止まりません。そして岡村ちゃん登場! なんだあの動き! なんて目をしてるんだ! 何度見ても新鮮に驚き動揺してしまうカリスマ性は、この日も健在すぎるほど健在です。
1曲目からバッキバキにアレンジされた『どぉなっちゃってんだよ』、さらに2曲目で『カルアミルク』を投下。序盤でいきなりバラードって、この時点でイベントにおける一般的な盛り上げ方のフォーマットを完全に逸脱してますが、彼にはそういうことは関係ないのです。過去のヒット曲や人気のナンバー、さらには川本真琴に提供した『愛の才能』も飛び出すなど、出し惜しみ一切ナシのセットリスト。ツアーを繰り返したせいかキレッキレのパフォーマンスと演奏で熱狂に包まれるオーディエンス。これだけ個性が爆発するアクトが続いたイベントのラストに、これ以上ないかたちで大トリの役目を果たしてくれた彼は、やはり稀代のエンタテイナーであり、誰よりも異端で異形の表現者でした。
この日登場したアーティストは、既存のフォーマットや約束事に頼ることなく、“自分だけの戦い方”で勝負するアーティストばかりでした。もちろん、フォーマットに則りながら素晴らしい表現をするアーティストもたくさんいます。どっちがどうという話ではなく、このイベントにはそういう人たちばかりが集まったということです。常人ではありえない動きで踊りまくりながら「ぴあベイベッ!」とシャウトする、“岡村靖幸”としか言い表せられない姿。彼がこのイベントのトリを務める必然を強く感じたステージでした。
そんな岡村靖幸は、12月19日(水)に20世紀の知られざる映像をアーカイブしたDVD-BOX『20世紀と青春と伝説』をリリース、さらには来年のツアー「むこうみずでいじらしくて」も決定! 作品タイトルもツアータイトルも最高すぎます。今回のステージで衝撃を受けた人は、このDVD-BOXとワンマンライブでよりディープな世界へ足を踏み入れてはいかがでしょうか。
<SETLIST> 1.どぉなっちゃってんだよ 2.カルアミルク 3.ア・チ・チ・チ 4.Vegetable 5.聖書(バイブル) 6.いじわる 7.あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう 8.だいすき 9.愛の才能 10.家庭教師 11.Super Girl
今回出演した6組は、音楽フェスにもよく出演する人たちです。例えば今後この6組が他のイベントに揃って出演する可能性は、なくはないかもしれません。でもこの6組が“ひとつのイベントの同じ日に同じステージに立つ”ことは、この先もほぼ100%ないでしょう。『MUSIC COMPLEX』というイベント名の通り、ナワバリを解き放って多様な表現と価値観を複合したときに、どんな化学反応が生まれるのか。そんなある意味リスキーとも言える<異種格闘技戦>に2万人を超える方々が集まってくれたこと、そして6組のアーティストが心から素晴らしいライブを披露してくれたことに、心から感謝します!