大学に動物保護サークル「犬部」を設立した獣医学部の学生・花井颯太(林遣都)。彼と「犬部」のメンバーたちの熱い思いと奮闘を、笑いあり、涙ありで描いた『犬部!』が、7月22日から公開される。「犬部」のメンバーで後に研究者となる佐備川よしみを演じた大原櫻子に、動物たちとの共演の様子や撮影の裏話を聞いた。
-今回、獣医学部の学生から研究者を演じた感想は?
私が演じた佐備川よしみは、「犬部」のネコ担当ということで、学生時代は紅一点というか、女性が少ない環境だったので、元気で明るく「犬部」を盛り上げたいという思いで演じていました。それから、30代になった研究者としてのよしみは、後輩もいて、ネコ用のワクチンの開発を進めているという、責任のある立場なので、学生時代の弾けた感じとはちょっと違う、責任を持って仕事をしている一人の女性として、成長した姿を見せたいと思って演じていました。
-メークや髪形も変えていましたね。
そうですね。メークさんとも「元気いっぱいの女の子にしたいね」と話していて、学生時代は髪形もポニーテールにしました。30代はハーフアップにして、ちょっと大人になった感じを表現したりしました。衣装も、(篠原哲雄)監督やスタッフさんと話し合いながら進めていきました。学生時代は、かわいらしさを出したいと思って、結構脚が出ていたり、肌が見える衣装が多かったのですが、大人になったときは落ち着いた感じのものにしました。
-学生時代と社会人になったときとの演じ分けはどのようにしましたか。
髪形などで外見的な変化がつけられたことは、役を演じる上でとても大きなものがありました。学生時代のよしみは、いつもわくわくしていてかわいいという感じで、動物への愛情もダイレクトに出せると思っていたので、幸せ感をたっぷり出したいと思いました。とにかく元気に明るくということを意識していました。研究者になったときは、あまり浮き浮きした感じはなく、動物の命を扱う大変さを自覚して、一生懸命に仕事をしているという真面目な表情を意識しました。
-16年後の研究室で「10年以上たってもワクチンが作れない」と嘆くシーンが印象的でした。
私自身も仕事をしているときに、悔しいと思ったことや、悲しい出来事がバネになったりすることがあります。なので、私もあのシーンはとても大事に思っています。なぜ、よしみが大変なワクチンの開発をここまで一生懸命にやっているのかが分かるような、重みのあるシーンで、ここがよしみの真髄だと思ったので、私自身の仕事に対する思いと重ねてせりふを言っていたような気がします。
-演じるに当たって、篠原監督から何か注文はありましたか。
台本を読んだときに、等身大に近いキャラクターだと思いました。監督からは、役柄へのオーダーよりも、「とにかく動物を扱う撮影になるので、いろいろと芝居の中でうまくいかないことが多くて大変だろうけど、頑張ろう」と言われました。
-動物が相手の撮影は、やはり苦労が多かったのでしょうか。
大変でしたけど、「よくこんなお芝居をしてくれるなあ」という驚きもありましたし、楽しかったです。ただ、本番のカメラが回るまでどんなお芝居をするのかが分からなかったので、「お願いだからこっちを向いて」(笑)みたいなところもありました。大変でしたけど、癒やされました。
-では、動物が相手で楽しかったことは?
やっぱり動物たちは純粋にすごくかわいいと思いましたし、林遣都さんが演じた颯太さんに寄り添っているワンちゃんたちが、指導の方が合図をすると、ほえる、待つ、近付くなどのお芝居が完璧にできたので、「すごいな」と。ワンちゃんたちのお芝居を見るのが、とても楽しかったです。
-特に印象に残っているシーンはありますか。
たくさんありますが、颯太さんが、ワンちゃんにシャワーを浴びせて、ワンちゃんがブルっと身震いするのがきっかけになって、ほほ笑ましい空気が流れるというシーンで、なかなかブルっとしてくれなくて、何度もテークを重ねて、すごく格闘したなあと。やっぱり犬の芝居がないと出てこないせりふもあるので、遣都さん頑張っていたなあと思いました。
-よしみは等身大に近いキャラクターということですが、ご自身との共通点や、似ていると感じたところはありましたか。
特に精神的に強いわけではないのですが、よしみが颯太さんに対してちゃんと自分の意見を言うところや、ネコを助けたいという強い思いを持って行動し、ワクチンの開発に励んでいるところなどは、ある意味、男っぽいというか…。何かそういうところが自分と似ているのかなあと思いました。
-演じながら、主人公たちの行動をどう思いましたか。
学生なのに、ここまでの行動力がある人ってすごいなと思いました。どの時代でも、ゼロから1を生み出すには強いエネルギーが必要だと思いますが、それを学生がやっていたわけですから。颯太さんのモデルになった太田快作先生は、実際に今でも動物を助けています。こういう方がいるからこそ、動物たちも幸せに生きられるんだろうなあと思います。感謝しなければと思います。
-では、林遣都さん、中川大志さん、浅香航大さんら、共演者の印象は?
遣都さんとは初共演でしたが、出演された舞台やドラマをずっと見ていたので、「あっ林遣都さんだ。よろしくお願いします」(笑)みたいな感じでした。大志くんと浅香さんとは共演したことがあったので、過ごしやすかったです。学生時代の雰囲気も自然にできていましたし、皆飾らない方ばかりだったので、とても演じやすかったです。
-映画の見どころやアピールポイントなども含めて、観客に一言お願いします。
動物たちのお芝居はもちろん見どころですが、実話がモデルなので、主人公たちの奮闘や格闘の様子に刺激されると思います。動物好きの方にとっては、改めて、命を扱う、命を共にするということはどういうことなのかを考えさせる映画だと思います。私自身もこの映画と出会って、かわいいとか飼いたいという気持ちだけではなく、飼ったら、本当に最後まで寄り添ってあげるのが大切だということに、改めて気付かされたので、今ワンちゃんを飼っている方や、動物を愛している方にもぜひ見ていただきたいです。改めて家族としての動物の大切さを感じられる映画だと思います。
(取材・文・写真/田中雄二)