絢爛豪華な元禄の世を背景に、世継ぎをめぐって激しく火花を散らす大奥のバトルを“男女逆転”の構図で描く『大奥〜永遠〜[右衛門佐・綱吉篇]』。大奥総取締・右衛門佐(えもんのすけ)役の堺雅人と、徳川幕府第五代将軍・綱吉役の菅野美穂が演技秘話を明かした。
女たちが幕府の要職に就いて男たちの上に位置する本作は、実在した大奥が舞台の時代劇で、唯一のウソが“男女逆転”という二重のファンタジーで描く異色作。第1弾『大奥』(10)、テレビドラマ版『大奥〜誕生[有功・家光篇]』(12)と、いずれも好評を博したが、その濃厚な愛憎ドラマは今作でもリアルで烈しい。大奥総取締として綱吉に取り入るも、やがて心惹かれていく右衛門佐役の堺は、「よしながふみさんの原作がとても面白いので、それをガイドに右衛門佐を演じて、その魅力を伝えることに努めました」と作品世界に忠実に寄り添ったことを説明。撮影中も歴史の本を読み、万全の準備をして参加したという。
一方、綱吉役の菅野は、堺とは異なるアプローチで“男女逆転”の世界に入ったと言い、「この綱吉は相手によって表情が変わる人だと受け止めたので、あえて拠り所を作らず、不安な気持ちを残すことが大事だと思いました」と人間性を断定しないで演じたメソッドを告白。すると堺が「なるほど、面白い!」と即座に反応した。「一貫性がない人なので、無理に決める必要がなかったということ?」と堺が聞くと、「頭脳戦が通用しない人だと考えたので、撮影中の気持ちを大事にしました」と菅野。堺は「何度もふたりで取材を重ねましたが、今日初めて知りましたね(笑)。今僕の中で腑に落ちましたよ」と納得していた。
すなわち、堺の言葉を借りれば、「その読めない人柄が、綱吉の素敵な魅力」なのだ。「僕自身側で見ていて、なんて掴みどころがない人だろうと思っていました(笑)。でも、それが右衛門佐が綱吉に惹かれていく要因のひとつだったのでしょうね」と腑に落ちた理由を明かす堺。「余裕がある人生だけれど、孤独で拠り所が犬だけ。でも、どこか魅力的ですよね?(笑)」と菅野も自信を示す綱吉像。この女将軍の魅力、映画館で確かめてみてはどうだろうか。
『大奥〜永遠〜[右衛門佐・綱吉篇]』
取材・文・写真:鴇田 崇