0.1gの誤算/緑川裕宇(Vo)

トリッキーなパフォーマンスでシーン注目を集めるヴィジュアル系バンド、0.1gの誤算。

先日は「コロナ対策をしたら余計に宗教感増してしまったビジュアル系バンド」と、着席したままヘッドバンギングをするファンを前にライブをする動画を投稿すると、5万RT以上拡散され、地上波の情報番組にも取り上げるなど大きな反響に。

このコロナ禍において、あの手この手を使ってハングリーに生き残ろうとする0.1gの誤算のフロントマン、緑川裕宇さんに話を伺いました。

今はネットで頑張るしか方法がなくて

――0.1gの誤算は今どのような状況なのでしょうか?

緑川:ライブに全力を注いでいるってことは、(コロナ禍以前から)ずっと変わっていないんですけど、今ってライブに来ることができない人も沢山いるわけで。

その中でどうやってバンドは頑張っていくのかを考えると、これまでだったら、ライブをいっぱいやって、ツアーをいっぱいやって、認知度、知名度を上げていくことがひとつの正解だったじゃないですか。

――たとえば、大きなメディアで大々的に宣伝するよりは、ヴィジュアル系専門誌に載ったり、全国各地のライブハウスを回って地盤を固めるヴィジュアル系インディーズバンドは多かったですね。

緑川:ツアー先のライブハウスでポスターを貼ったり、フライヤーを置いてもらったり、そういう地道な方法は、今はできなくなってしまっていますよね。たとえば47都道府県ツアーにすごく憧れがあって、いつかやりたかったんですけど、今はそれはできない。

そうなると、ネットで頑張るしか方法がなくて。それがバズってテレビで紹介されるだとか、そういうところに力を入れています。

――これまで通りのライブができないことにフラストレーションを感じることはありますか。

緑川:もう、その限られた条件の中で楽しむことを終えたっていうか、その中でいかに楽しいことをしようと考えるようになりましたね。

今みたいな状況になって2、3回目までは「こんなに違うんだ」って思ったりもしたけど、例えばお客さんが声を出せなくても、音の出るグッズだとか、スマホに声を録音してもらってそれを流してもらうだとか、今の状況でどうやってライブを楽しんでもらうかを見出すしかないですよね。

――ちょうど、先日も着席したお客さんがヘドバンをしているライブ映像がバズって、朝の情報番組などでも紹介されていましたね。

緑川:あれも、最初は会場から「150人入れてもいい」と言われていたけれど、どんどん
状況が変わってきてしまって、最終的に60人しか入れられない、しかも着席ということになっちゃったんです。

――それはなかなか厳しい状況では。

緑川:でも、ニュースとか見てると本当に状況は大変でずっと変化してるし、会場側の言うことが変わっちゃうのも仕方ないかなと思っています。それでライブをやってみたら、不思議な光景が生まれて楽しかったんですよ。その後にネットに上げたらバズったりする。結果良かったんじゃないかって。

――ポジティブな受け止め方ですね。

緑川:なんか、もう高校生のときみたいな気分なんですよ。あの頃はスタジオで音を合わせるだけでもなんか幸せだったし楽しかったしワクワクしたし楽しかった。ライブもお客さんいなくても、なんでも楽しかったなみたいな。それと同じような感じに戻っています(笑)。

俺のファンはあんまり俺の動画を見てないらしいんですよ

ーー実際、SNSなどに動画を上げてバズった結果、ファンの方の反響はどのようなものだったのでしょう。

緑川:いや、俺のファンはあんまり俺の動画見てないらしいんですよ。ファンに「見てる?」って聞いても「私、TikTok(のアプリをスマホに)入れてないんだよね」って。バンギャは俺のことを見ていないのに、あんなにフォロワーがいるということになるんですよ。

――では、ファンの方以外の方が見ていると。

緑川:そうなんです。街でヴィジュアル系のことを全然知らなそうな人とかに、「いつも見てます!」と声をかけられるようになりました。ジャンル外の人に見てもらっている実感はあります。最近はライブに来てくれる人も、撮影会で話したりすると、YouTuberやアイドルが好きな人も増えているんですよね。

そういう意味で、最近俺や誤算のことを好きになった人は、俺のことををどう思っているのか、「動画やってる人」みたいに思ってるんじゃないかと不安になってきたりするんですけど(笑)。

――ヴィジュアル系であるアイデンティティの危機が!

緑川:そこはライブで伝えていくしかないですね。

――緑川さんはヴィジュアル系に対しての愛や“あるある”をよくツイートされていますし。

緑川:そうやって伝えていかないと、どんどん自分がヴィジュアル系の人であることが忘れられていきそうなので(笑)。

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