■『熱中時代』は役者としての大きな転機に

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1977年には、山口百恵で有名な赤いシリーズの5作目『赤い激流(TBS系)』に水谷豊は主演している。山口百恵は第一話にゲストとして出演しているだけだが、平均視聴率25.5%、最高視聴率37.2%と、赤いシリーズの中では最高の数字を残した作品だった。このドラマでの水谷豊は天才的な才能を持つピアニストで、劇中でショパンの「英雄ポロネーズ」、リストの「ラ・カンパネラ」、ベートーベンのピアノソナタ17番「テンペスト」を弾いている。

当時、水谷豊はピアノが弾けなかったが、このドラマのために特訓したらしい。もちろん、実際の撮影ではプロが弾いているのだが(羽田健太郎)、水谷豊の指の動きは本当に弾いているような迫力があった。そして、『相棒season3』の第15話「殺しのピアノ」では、杉下右京として再びショパンの「英雄ポロネーズ」を弾いている。

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翌年の1978年から始まった『熱中時代(日テレ系)』は、水谷豊の人気を決定的にした作品だった。小学校の先生を演じた第1シリーズは最高視聴率が40%を超え、その後、刑事編、再び先生編、さらに先生編のスペシャルなどが作られた。刑事役は1975年にも『夜明けの刑事』という作品で演じているが、主演としてはこの『熱中時代~刑事編~』が最初だと思う。ドジだけど真っ直ぐな新米刑事を、水谷豊はコミカルに演じていた。

『相棒』の杉下右京には「はい?」や「細かいところまで気になってしまうのが僕の悪い癖」などの口癖があるが、この『熱中時代』で演じた刑事では、「ごきげんだぜ~」というのが口癖だった。

この『熱中時代』あたりから、水谷豊にアウトローのイメージはなくなった。ただ、今でも杉下右京が犯人に対して激昂するシーンなどを見ると、とんがった役を多くやっていた頃の水谷豊を思い出す。その境目となった『赤い激流』や『熱中時代~刑事編~』がともにDVD化されていないのは、なんとも残念だ。