【なぐもんGO・85】 あの手この手で来店客を驚かせている飲食店といえば、ユニークな外観でお馴染みの「びっくりドンキー」だ。筆者が好きなのはメニュー表。木製の重厚なトビラのようなデザインに、今でも心が躍る。こういった特色をよく表した店名だが、そもそもびっくりドンキーの名前の由来はどのように決まったのか。そこには意外なストーリーがあった。
1号店は岩手県盛岡市、マックの日本上陸に衝撃
1968年12月15日、創業者の庄司昭夫氏は岩手県盛岡市にわずか13坪の「ハンバーガーとサラダの店・べる」をオープンした。実は盛岡市が、びっくりドンキーのスタート地点だった。庄司氏は当時からたくさんの人をワクワク、ニコニコさせるのが大好きで、手作りのような装飾や水にレモンを絞って提供するなどで驚きを提供していたという。
目指していたことは、ただ外食する場所を提供するのではなく、楽しい時間を過ごせる場所の提供だ。農家から牛の頭部をもらい、自らドラム缶で煮込み続けて装飾用の骨格標本をつくるなど、来店客を 驚かせることにこだわっていた。
そうして徐々に店舗を増やし規模を拡大していたが、71年に転機が訪れる。ハンバーガー大手「マクドナルド」の日本上陸だ。庄司氏がハワイで事前に調査した際には、そのシステム化されたオペレーションに驚いたという。
びっくりドンキーの広報担当者によると、庄司氏はマクドナルドに“サラブレッド”のような印象をもった、とのこと。実際にびっくりドンキーで提供していた主力のハンバーガーのパンを、米に変えるほどの衝撃だった。72年6月から、主力メニューをハンバーグに変更したのはこのことがきっかけだった。
さらに庄司氏は、「マクドナルドがサラブレッドとするなら、当社はロバ」と例えたという。これが“ドンキー”の由来だ。
ロバは「かっこいい」わけでも「スマート」なわけでもないが、その眼には優しさがあり、どんなときも一生懸命に頑張るイメージがある。「のろまでもいい、たくましく育ってほしい」という願いを込めて、80年の札幌西区の新店からびっくりドンキーが生まれたのだ。
ちなみに、“びっくり”は先述の通り庄司氏がたくさんの人をワクワクさせて驚かせることが好きだったことに由来する。2022年はハンバーグディッシュの50周年。「記念してお客様と一緒に祝えないかと、社内でも検討しています」 (同担当者)という。22年6月が今から楽しみだ。(BCN・南雲 亮平)