家電量販店のテレビ売り場では、一番目立つ場所に有機ELテレビを配置している店舗が増えている。また、8月にBCNが実施したテレビ購入意向者に対するアンケート調査でも、有機ELテレビの認知率は7割と高く、一般的にも浸透しつつあることが明らかとなった。現在、製品を販売しているメーカーは、LGエレクトロニクス、ソニー、パナソニック、東芝の4社。大手が出揃ってから、約4か月が経過する。本記事では、家電量販店・ネットショップの実売データを集計する「BCNランキング」をもとに、市場の動向と、各メーカーの現在地を分析した。
まず、有機ELテレビを販売している4社の製品が出揃ったのは、今年6月の第2週だ。その翌週(6/19週)の販売台数を「1.00」として、約4か月間の指数推移を算出した(図1上)。その結果、4週目(7/17週)まではプラス域を維持し、順調な出だしであったが、それ以降は「1.00」を下回る週が目立っている。直近の10/16週も「1.01」と、4か月前とほぼ同一水準で、いまのところ急速な立ち上がりとはいえない状況が続いている。
メーカー別の販売台数シェアをみると、4社が出揃った直後は、ソニーが5割以上を占めるスタートダッシュとなった(図1下)。しかし、LGエレクトロニクスとパナソニックがそれぞれ存在感を出し始め、10月以降は3社がそれそれ3割前後で推移。シェア争いは三つ巴となっている。
各社がしのぎを削る有機ELテレビ市場だが、薄型テレビ(液晶テレビと有機ELテレビの合計)に占める販売台数は、わずか1~2%程度に過ぎない。まだまだ比率が低いのは、サイズ帯のラインアップ数が3種類(55型、65型、77型)と少ない点や、液晶テレビと比べて価格が高い点が挙げられる。特に価格面は、50型以上の液晶テレビの平均単価が18万円前後であるのに対し、6/19週の有機ELテレビは44.1万円と、2倍以上の開きとなっている(図2)。消費者サイドからすれば、「有機EL」という付加価値だけでは高価な製品を購入しにくいのが現状となっているようだ。
ただし、その平均単価は4か月間で8万円ほど落ちている。元々価格が安い、LGエレクトロニクスの20万円台とは10万円以上の開きがあるが、パナソニックと東芝の平均単価は約15万円も下落しており、少しずつ手の届きやすい価格帯となりつつある。また、中長期的にはサイズが50型以下の製品や、新たなメーカーからの発売も考えられるだろう。現状は横ばいだが、直近では年末商戦に向け、各メーカーがどのような動きを見せるのか、期待したい。(BCNアナリスト 山口渉)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。