SF映画『ブレードランナー』(82)の35年ぶりの続編となる『ブレードランナー2049』が公開された。
舞台は、前作の2019年から30年後の世界。ロサンゼルス市警のブレードランナーK(ライアン・ゴズリング)は、レプリカント(人造人間)を捜査する中で、謎を究明するために、旧ブレードランナーのデッカード(ハリソン・フォード)と接触することになる。
かつて『エイリアン』(79)と『ブレードランナー』を監督したリドリー・スコットは、新作『エイリアン:コヴェナント』は自ら監督したが、本作では製作総指揮に回り、監督は『メッセージ』(16)のドゥニ・ヴィルヌーヴが務めた。
その『ブレードランナー』は、今でこそSF映画の名作とされるが、日本初公開時は不評で、早々に上映が打ち切りになるなど、興行的にも失敗している。
ところが、その後、名画座での上映、ビデオやレーザーディスクなどの映像ソフトの普及に伴い、カルト的なファンを獲得。難解なストーリーへの批判は、“謎”について語る興味へと転化し、スタイリッシュな映像も称賛されるなどして、いつしか伝説的な存在となっていった。また“ディレクターズ・カット”などの別バージョンの公開も、伝説化に拍車を掛けた。
今回、続編を監督したヴィルヌーヴは、自ら「『ブレードランナー』の大ファン」と公言するだけに、ファン代表として映画を作ったようなところがある。
記憶が鍵を握るストーリー展開、フィルムノワール的な美学、くすんだ色調、ダークでウエットな都市の雰囲気、魅力的でありながら恐ろしい未来の光景、ヒーローと悪役の境界線にいる主人公など、前作からの踏襲を前面に出しながら、同時に前作が残した謎解きにも挑んでいる。
従って、自分も含めた前作からのファンには満足感を与えるものの、前作を見ていない一般的な観客が理解するには少々厳しいものがあると思われる。
前作が描いた2019年の世界は、今われわれの目前にある現実の2019年とは大きく異なっている。だから本作が描いた未来世界も、必ずしも現実の先にあるものというわけではない。あくまでも『ブレードランナー』という映画における未来図なのだ。
その点を忠実に描いたところが本作の最大の魅力ではあるのだが、同時に『ブレードランナー』という素材を使って描く世界の限界も、露呈させてしまったのではないだろうか。(田中雄二)