杉田玄白役の新納慎也(左)と前野良沢役の片岡愛之助

 大河ドラマ「真田丸」のスタッフ、キャストが再集結して送る正月時代劇「風雲児たち~蘭学革命(れぼりゅうし)篇~」(2018年1月1日放送)で、主人公の前野良沢役を演じる片岡愛之助と杉田玄白役を演じる新納慎也。同窓会のように撮影を楽しんでいる2人が、本作に懸ける思いや、現場でのエピソードを語ってくれた。

 本作は、みなもと太郎氏のギャグ漫画「風雲児たち」を原作に、脚本家・三谷幸喜流の笑いとサスペンス満載で描く歴史ドラマ。鎖国中の江戸中期に、史上初の西洋医学書の和訳に取り組み、革命的な翻訳を成し遂げた良沢と玄白だが、刊行された「解体新書」に良沢の名はなく、名声は玄白だけのものとなる。果たして、2人の間に何が起きたのか…?

-実は11年前から、三谷さんは片岡さん主演で本作の制作を望んでいたと聞きましたが。

愛之助 はい。一度お話を頂いたのは10年近く前だったので、あの企画が生きていたんですか?と驚きましたが、非常にうれしいです。自分の実年齢が(良沢に)近づいたことで、今の方が演じやすくなったと思います。

-新納さんは、三谷作品によく出演されていますが、オファーを受けていかがでしたか。

新納 「おまえ、誰やねん?」と思っている方が多いでしょう(笑)。まさかこんな大きな役を頂けるなんて思ってもいなかったので、本当にびっくりしました。そして、プレッシャーに押し潰されそうになりながらクランクインを迎えました。頭もそり、衣装も着て、愛之助さんも来て、もう切腹寸前の覚悟です。どうにでもなれという思いでやっています(笑)。

-わざわざ髪までそるとは相当な気合の入れようですね。

新納 三谷さんからは「杉田玄白は丸刈りだけど、今はかつらの技術がすごいからかつらでいいよ」と言われましたが、「いや、こんなに大きな役を頂いたのでそります」と言ってそりました。三谷さんは「もし似合わなかったら、そった上にはげ(のかつら)をかぶりなさい」とおっしゃっていましたが、取りあえず今は地頭で撮影に挑んでいます。

-どのように役作りをされましたか。

愛之助 前野良沢は研究者とか職人のようで、こだわりを持って徹底的に突き詰め、妥協は許さない人。自分にはないところがたくさんあって新鮮です。僕は意外と能天気なので、そういうところを出さないようにしています。

新納 最初に三谷さんから「解体新書と言えば杉田玄白だけど、彼は前書きしか書いていなくて、オランダ語も分からず、ただ『出しちゃえ!』っていうノリだけの人だったんです。ねっ、新納さんにぴったりでしょ」と言われ、「どういうことやねん」て思いましたが、とにかく軽快に明るくやろうと思っています。ただ、2人は共通して日本の医術を変えたいとか、「ターヘル・アナトミア」を訳して「解体新書」にするんだという強い意志を持っていたので、そういうつながっている部分と相反する部分がぶつかる面白さが出ればいいなと思います。

-「真田丸」では武将役、本作では医者役ですが、役に臨む心構えも違いますか。

愛之助 僕は武将や侍を年中やっているので新鮮です。新しいチャレンジと思いながら取り組ませていただいています。

新納 武将役は藩とか城とか家を背負っているので大きなことを考えなければいけないけど、このドラマは、お医者さんではあるけれども、一人の普通の人間が、分からない本を訳そうと奮闘する姿に心が打たれるので、できるだけ等身大で演じたいです。

-「真田丸」チームが再集結しましたが、現場はどのような様子ですか。

愛之助 いい雰囲気のチームなので非常に楽しく、和気あいあいとしています。「久しぶり!」と同窓会みたいな感じです。

新納 先ほど、栗原(英雄)さんとこひ(小日向文世)さんが(クランク)インしてアップしました(笑)。こひさんは「不思議な感じだね~」と言っていましたが、僕は基本的にこの(セットの)家にいるので、親戚が順番にあいさつに来て昔話をするお正月という気分です。

-お2人のチームワークはいかがでしょうか?

愛之助  ばっちりです。

新納 前野良沢は漫画では四角い顔で頑固じじいなので、怖い感じで来るのかと思ったら、愛之助さん独特のソフトな部分があって、逆にリアルで怖いです(笑)。

-最後に視聴者にメッセージをお願いします。

愛之助  「解体新書」というと難しいと感じるかもしれませんが、非常に分かりやく、解体場面もグロテスクではなく、面白い演出になっているので、ぜひご家族でご覧ください。

新納 僕らが教科書で知った歴史上の話が、三谷さんの脚本によって人間くさい、ただの人間同士のぶつかり合いとして描かれています。途中、涙あり、笑いありのシーンもあるので、ご家族でおせち料理を食べながら見ていただきたいです。

(取材・文・写真/錦怜那)