ドラマに出てくる登場人物は、さまざまな仕事に就いている。刑事、医師、教師、弁護士などはテッパンの職業で、その設定の分かりやすさからいつの時代でも登場するが、一般的な職業となると、やっぱり時代を反映する事が多い。つまり、景気が良ければそれなりに派手な職業が多くなり、景気が悪くなれば登場人物たちの仕事環境も悪くなるということだ。
現在は長い不況が続いているので、やはりドラマ内の職業事情はかなりキビシイ。ということで、今回は景気が良かった時代の作品と比較しながら、ドラマに登場する仕事の変化をリポートしてみよう。
トレンディな作風は仕事もシビアに反映
まずはフジテレビ系の月9。民放を代表するドラマ枠だが、今期の『ビブリア古書堂の事件手帖』では、AKIRAが演じる五浦大輔が30歳のフリーターとして登場している。大学卒業後、会社に就職するものの、その会社が倒産。ハローワークに通ったがいい仕事が見つからず、誘われるままに古書店でバイトをしている状況だ。
ちなみに、原作の五浦大輔は24歳で、やはり大学卒業後、小さな建設会社から内定をもらったが、入社する前に倒産してしまい、プー太郎状態が続いていたという設定になっている。AKIRAのキャスティングは大人の事情も絡んでいるだろうが、30歳の設定になったことで、よりシビアな感じは強くなっている。
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前クールの『PRICELESS』では、木村拓哉が演じる金田一が、38歳で一時期は無職・無一文・ホームレスという 状況になった。そうなった理由は腹違いの兄による策略で、景気のせいではないが、メーカーの下請けの工場の厳しさなどは頻繁に描かれていた。もともとこの ドラマは、どんな逆境にも明るく前向きに立ち向かっていけば“PRICELESS”なものが見つかる、というような切り口だったので、不況の世の中だから こそ生まれた企画かもしれない。
木村拓哉といえば、これまでにも、インテリアメーカーの社長(2010年の月9『月の恋人』)、脳科学者(2009年の土8『MR.BRAIN』)、総理大臣(2008年の月9『CHANGE』)、カーレーサー(2005年の月9『エンジン』)、パイロット(2003年の日9『GOOD LUCK!!』、検事(2001年の月9『HERO』)、美容師(2000年の日9『ビューティフルライフ』など、数々の職業に就いてきた。
もっと前の1998年には、中山美穂や仲村トオルと共演した『眠れる森』で、コンサート会場などの照明を演出するライティングデザイナーというオシャレな仕事もしていた。その前年の1997年は、松たか子と共演した『ラブジェネレーション』で広告代理店の社員。ただ、この頃も平成不況といわれていた時代で、木村拓哉が務めていた代理店は二流半の会社という設定だった。
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本当に景気が良かったバブル期の月9では、中山美穂と柳葉敏郎が共演した1990年の『すてきな片想い』で、柳葉敏郎が自ら外資系の一流商社を辞めて、小さな玩具会社に転職している。その理由は、かつて婚約者から一流企業に勤める男が好きだったと言われたから。要するに、肩書きではなく、本当の自分を好きになって欲しかったという理由で辞めたのだ。
今の時代だったら、たとえ恋人にそんなことを言われても、一流企業を辞めたりしなかっただろうに……。でも実際、バブル期は会社を辞めても何とかなると思っていた人は本当に多かった。