リタ・モレノ(左)とスティーブン・スピルバーグ監督(C)2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

 巨匠スティーブン・スピルバーグ監督が、シェークスピアの『ロミオとジュリオット』をモチーフにした伝説のミュージカルを映画化。社会の分断を乗り越えようとした“禁断の愛”の物語を、数々の名曲とダイナミックなダンスとともに描いた感動のミュージカルエンターテインメント『ウエスト・サイド・ストーリー』が2月11日から公開される。

 本作は、先日発表された第79回ゴールデングローブ賞では、作品賞、主演女優賞(レイチェル・ゼグラー)、助演女優賞(アリアナ・デボーズ)を獲得し、アカデミー賞の有力候補としても注目されている。

 『E.T.』(82)や『ジュラシック・パーク』(93)などで、観客の想像を遥かに超える映像を世界中に届け、『シンドラーのリスト』(93)と『プライベート・ライアン』(98)で2度のアカデミー賞監督賞に輝き、映画監督として、初めて作品の総興行収入が100億ドルを突破したスピルバーグ監督にとっても、本作が初のミュージカル映画であり、新たな挑戦となった。

 もともと『ウエスト・サイド・ストーリー』は、今から約60年前にブロードウェーで誕生し、61年版の映画『ウエスト・サイド物語』はアカデミー賞で10部門を受賞するという快挙を成し遂げた不朽の名作として知られる。

 この伝説の作品の新たな製作を長年夢見てきたというスピルバーグ監督は、撮影時のこだわりについて、「この映画の70パーセントはニューヨークなどの実際のロケーションで撮影されている。『アメリカ』が歌われるシーンでは、真昼のニューヨークの道路で撮影している。これが以前の作品とは大きく違う点だ」と、過去の作品以上に、壮大なスケールで描いたことを強調した。

 また、主人公のトニーを演じたアンセル・エルゴートは、スピルバーグ監督の演出について、「監督は僕たちに、普段通りシンプルに演技をすればいいと言った。ミュージカルだから、演劇のように演じたり、歌ったりしなければいけないと思っていたけれど、監督は、もっと実生活のように演じればいいと教えてくれた。映画を見た後には、監督の演出は正しかったと思った」と、リアリティーとミュージカルとの絶妙なバランスについて解説した。

 さらに、ヒロインのマリア(ゼグラー)の義姉アニータ役(『ウエスト・サイド物語』ではリタ・モレノが演じた)で、ゴールデングローブ賞の助演女優賞を受賞したデボーズは「監督のリアリティーを追求する姿勢には感銘を受けたわ。(撮影前に)1957年にその地区に実際に住んでいた人を連れてきて私たちと話す場を設けたの。当時の言語をよく知る専門家も呼んでくれた。監督はディテールの全てに注意を払っていたのよ」と語った。

 実際のロケーション、シンプルな演技指導、リアリティーの追求が、監督の“三つのこだわり”だったのだ。その、新生『ウエスト・サイド・ストーリー』は、スピルバーグ監督が“キャリアの集大成”と語るほどの覚悟で挑んだ作品。監督の熱い思いを、ぜひ劇場で確認してほしい。

(構成/田中雄二)