NHKで好評放送中の連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」。戦前から現代まで、3世代100年にわたる物語を紡ぐ本作に、いよいよ3代目ヒロイン、大月ひなたが登場。新津ちせが演じた子ども時代の後を継ぎ、成長したひなたを演じるのは、大河ドラマ「青天を衝け」(21)での好演も記憶に新しい川栄李奈。ひなたと深くかかわる五十嵐文四郎役の本郷奏多と共に、ドラマの見どころを語ってくれた。
-お二人が演じるひなたと五十嵐の役柄について教えてください。
川栄 ひなたは、見ていて応援したくなるような子です。本当に普通の子で、一生懸命頑張るけど、なかなかうまくいかない。背中を押してあげたくなるようなところがあるので、話が進んでいくと、どんどん魅力を感じていただけるようになると思います。しかも、私も今まで周りから「普通だね」と言われることが多かったので、すごくやりやすいです。勉強ができずに挫折してしまっても、あっけらかんとしている感じとか、自分と似た部分も多くて(笑)。
本郷 五十嵐は、時代劇のスターを夢見て、撮影所の大部屋俳優として頑張っている青年です。ただ、ひなたに対してだけは、なぜかライバル意識を持っているというか…。きっと、好きな子に意地悪をしてしまうタイプなんでしょうね。だから、最初は「なんだこいつは?」という感じでひなたと出会うんですけど、徐々にパーソナルな部分が見えてくると、「彼も彼なりの信念を持って頑張っているんだな」と分かっていただけるんじゃないかなと。素顔は、不器用だけど真っすぐに夢を追い掛けている青年なので、視聴者の方にも応援していただけるようになると思います。
-ひなたと五十嵐のかかわりについて教えてください。恋愛の要素も入ってくるようですが…。
川栄 (初代と2代目ヒロインの)安子さん(上白石萌音)やるいさん(深津絵里)にはキュンキュンするシーンがたくさんあったんですけど、ひなたと五十嵐にはそういうシーンは少なく、古風な“淡い恋”というより、もっと現代的な感じです。ただ、安子さんやるいさんにあった夏祭りのシーンがひなたにもあるので、そういうところで3世代のつながりを感じていただけると思います。
本郷 安子さんは「古風でおしとやかな日本女性」という感じでしたが、ひなたは前に前にと出てくるタイプです。五十嵐も、不器用ですごく子どもっぽいところがあって、今までの(ヒロインの相手役の)稔さん(松村北斗)のような好青年とか、不思議な魅力を持つ錠一郎さん(オダギリジョー)みたいなタイプとは全く違います。そういう今までとは違う2人の掛け合いを楽しんでいただければ。ひなたが回転焼きを作る場面では、実際に川栄さんが焼いた回転焼きを食べさせていただきました(笑)。
-川栄さんは「とと姉ちゃん」(16)以来の連続テレビ小説出演ですが、ヒロインを演じてみた感想は? また、本郷さんは初めての連続テレビ小説の現場で感じたことを教えてください。
川栄 出番が多いことがすごくうれしいです。今までは、主人公がいろいろな人と関わっていくのを見て、「この人とも、この人ともお芝居できるんだ。いいな」と思っていましたが、今は自分がその立場にいられるので、本当にありがたいなと。ヒロインのプレッシャーみたいなものは特に感じていませんでしたが、安子さんや稔さんやるいさんが、口々に「ひなたの道を歩いていきたい」と言うのをオンエアで見ていたら、「私がひなたなんだ」と気付いて、プレッシャーを感じました(笑)。
本郷 驚いたのは、撮影する量がものすごく多いことです。だから、川栄さんは本当にすごいなと。香盤表を見ると、最初から最後まで、必ず「ひなた」の名前が入っている。それでもあれだけのせりふ量をしっかり覚えて、現場で眠そうにしているわけでもない。努力を見せないところがすてきで、本当に尊敬しています。しかも最近は、英語のせりふもたくさんあって…。
川栄 英語が入ってくるので、もうパニックです(笑)。でも、本郷さんは、私のお芝居の間が想定とちょっと違っていても、黙って合わせてくださるので、すごく助かっています。
-現場の雰囲気を教えてください。川栄さんは、両親役の深津絵里さんやオダギリジョーさんと一緒で、セットも庶民的な感じですよね。
川栄 撮影現場は本当におだやかで、温かな空気が流れています。私が緊張し過ぎて混乱してしまったときも、深津さんがその緊張を和らげてくれるような空気感をまとっていて。ちょっとやりづらそうにしていたら、「今のやりづらかったよね」とおっしゃってくださったり、「これはこっちの方が動きやすいよね?」と気遣ってくださったり…。すごく助けてもらっています。オダギリさんも、お父ちゃんのまま、という感じで本当に優しくて。
本郷 僕は、松重豊さんとご一緒させていただくシーンが多いですね。松重さんは、(演じる)虚無蔵さんと同じように、たたずんでいるだけで緊張感がありますが、お話してみると、すごく柔らかくて優しい方。立ち回りのシーンも多いので、一緒に練習させていただいています。
-ひなた編は徐々に現代に近づき、劇中の時代をリアルに体験してきた人も身近にいると思いますが、そういう人から話を聞いて、役作りの参考にしたことはありますか。
川栄 この作品のメークさんがまさにその世代の方なので、メークをしていただきながら「昔はこういうのがはやったのよ」とか、いろいろな話を伺っています。「ノストラダムスの大予言」というのが出てくるんですけど、それも「本当にこういうのがあって…」と話してくれるので、興味深く聞かせていただいて。いずれ平成の時代に入っていきますが、知っている時代だからこそ、感情の持っていき方が分かりやすく表現できるんじゃないかな、と楽しみにしています。
本郷 僕は、時代劇の監督役の土平ドンペイさんが、実際に京都で大部屋俳優をやっていらっしゃったので、いろいろなことを教えていただきました。「これはどうなんですか?」と聞くと、「当時はこうで…」とリアルな話をしてくださるのは、すごくありがたく、勉強になります。「ノストラダムスの大予言」も、小学生だった当時、ものすごく話題になったことを思い出して…。
川栄 覚えているんですか?
本郷 「1999年の何月何日に地球が終わる」と言われていたんですよね。だから、「その日までにお小遣いを全部使い切ろう!」と思って本当に使い切ったのに、終わらなかったので「終わらないじゃん!」とブチ切れたことを覚えています(笑)。
(取材・文/井上健一)