10月にレポートした名古屋メシの話の折にご紹介した「なごやめし博覧会」が、11月20日をもって1ヵ月半の会期を終了した。名古屋市内の272店舗が参加した食べ歩き型のグルメイベント。事務局によると、参加メニューは期間中に少なくとも1万食以上が食べられたとのことで、まずまず盛況に終ったと言えそう。初めての試みということもあり、主催者としても手探りの運営だったが、期間後半にグンと参加者が増え、それなりの手応えをつかんだようだ。来年以降の継続的な開催もどうやら視野に入ってきた。

その「なごやめし博覧会」の中の企画のひとつとして行われたのが「新なごやめしグランプリ」。10店舗がエントリーして、各店が工夫を凝らした新なごやめしメニューを開発し、食べ歩いたお客様が気に入ったメニューに投票するシステムだ。
12月1日、その投票の集計が終り、得票の多かったメニューに贈られる「新なごやめしグランプリ」が発表された。
さっそく、記者会見が行われる名古屋市役所に乗り込み、取材と試食を敢行した!

会場は市役所内の市長応接室。そう、グランプリを授与するのは皆さんご存知の河村たかし名古屋市長。市長お墨付きの“新なごやめし”ということになるわけだ。
そして、グランプリを受賞したのは「グランス パティスリー」というケーキショップがエントリーした「徳川プリン」













ちなみに、準グランプリも設定されており、こちらの受賞は、「焼鳥とりっぱ名駅店」がエントリーした
「名古屋どまんなかめしコーチン味噌仕立て」

 













両受賞メニューを試食した市長は、お約束の名古屋弁で「どえりゃあ、うみゃ~!」とご満悦の様子。









 













これが授与された表彰状。文中の“どえらけにゃあ”に注目。名古屋弁で「とても」を意味する言葉は「どえりゃあ」。その「どえりゃあ」の最上級を表す言葉が「どえらけにゃあ」です(笑)


さて、準グランプリの「名古屋どまんなかめしコーチン味噌仕立て」は、その名前からも分かるように、名古屋コーチンと味噌を使ったいかにも名古屋っぽい王道路線。
対して、グランプリに輝いたのは、わりとオーソドックスな見た目の「プリン」。もちろん味噌を使っていたりするわけでもなく、いったいどこが“新なごやめし”なの?と疑問を抱く方がいても当然ですね。

そこで、受賞されたグランス パティスリーのオーナーである古川博一さんにお話を伺いながら、さっそく「徳川プリン」を試食させていただき、その秘密を探りました。

古川さんがまず発想したのは「名古屋の豪華なイメージ」とのこと。光りモノが大好きな名古屋嬢しかり、さかのぼれば享保年間、7代尾張藩主・徳川宗春がド派手な解放政策できらびやかな名古屋を作り上げた系譜が脈々と引き継がれ、“豪華”なモノが好まれる気質があるのは確か。そのイメージを、まずは上に乗せた金箔と陶器の器、そして名前で表現した。ちなみに陶器は地元の美濃焼だ。

さて中身は……。家康公の生誕地である三河の地鶏の卵をふんだんに使用していることが特徴。食べてみると、他のプリンと比べて卵の濃厚な味わいが強いのが印象的だ。
(※ここでひとつ解説しておく。美濃とか三河って名古屋じゃないじゃん、と思う方がいるかもしれない。そうじゃないんです。我々名古屋人が「名古屋」と言うときに指すのは、名古屋市内だけのことではなく名古屋圏、つまり愛知県内はもちろん、岐阜県の南部や三重県の北部も含まれるんです)

そしてもうひとつの大きなポイントが、プリンの中、器の底に「小豆」が入っていること。

 














 

食べ進むと小豆が姿を現す
そう、名古屋メシ文化のひとつ「小倉あん」を取り入れているのだ。みなさん名古屋名物「小倉トースト」はご存知ですか? トーストの上にたっぷりの小倉あんを乗せた名古屋人の大好物。モーニングの定番でもあります。











これが「小倉トースト」

そのエッセンスをさりげなく入れたところにセンスが光ります。食べたときに食感と味のアクセントにもなっており、これがなければ「徳川プリン」は完成しない、と感じました。古川さんによればメニュー開発でいちばん苦労したのも、この部分だったそう。小豆の茹で加減とキャラメルの濃さとのマッチング、これがピタリとはまらないと美味しいプリンにならない。最大のポイントがプリンの底に潜んでいるというわけだ。

ちょっとマニアックな名古屋めし解説になってしまいましたが、「徳川プリン」は単純に美味しいプリンだと言えます。たぶんそこが多くのお客様の舌を捉え、グランプリに選ばれたのでしょう。

補足のプチ情報をふたつ。
(1)「徳川プリン」の売上の一部は徳川黎明会に寄付され、文化財の保存・伝統技術の継承に役立てられます。
(2)グランス パティスリーの古川博一オーナーはかなりのイケメンです。 女子は要チェック!

さて、このグランプリ受賞作「徳川プリン」。イベント限定のメニューでしたが、グランス パティスリーでは、名前を「葵プリン」に変更して通常販売を開始しました。380円(税込)だそうです。名古屋へ起こしの際は、このセンス溢れる新なごやめしを食べてみて下さい。通信販売は行っていません。他の地域でも、デパートの催事販売で出品することもあるようなので、ホームページでぜひチェックを。








【関連リンク】
グランスパティスリー
住所:名古屋市北区杉栄町4-83
営業時間:10時~20時

焼鳥とりっぱ名駅店
住所:名古屋市中村区名駅3-17-18
営業時間:17時~24時

なごやめし博覧会公式ホームページ

 いな・ただし ぴあ株式会社 中部支局中部編集部編集長。ぴあでの編集経験25年。映画や音楽などのエンタメに加え、地元・名古屋文化をこよなく愛する。青春の1本は「アメリカン・グラフィティ」。最近ゾッコンの女優はエル・ファニングちゃん。いちばん好きなバンドはTHE SMITH。邦楽だとフジファブ。東京風の蒸した柔らかいウナギは許せない。ウナギはパリッと香ばしくなきゃ! もちろん八丁味噌LOVE。味噌串カツは最高の酒のアテだね。そして当然ドラキチ。幼い頃から高木守道さんを敬愛しているので、来期の監督就任は熱烈歓迎、猛烈応援。