名古屋は栄のど真ん中。スラリとそびえる「名古屋テレビ塔」は名古屋人にとって街のシンボルであり、心のオアシスである。少なくとも僕にとってはそうだ。名古屋城は存在がデカすぎる。その偉容に恐縮しちゃって親近感は今ひとつだ。その点、テレビ塔には友達のような気安さがある。デートや買い物で栄にお出かけすると、そこにはいつも寄り添うようにテレビ塔が立っていた。みんなを見守るように……。
名古屋テレビ塔に関する名古屋人の自慢話をひとつ。
1954年6月に完成した名古屋テレビ塔は“日本で最初の”電波塔なのです!
東京タワーの完成は1958年12月だから、4年半も早い。映画「ALWAYS三丁目の夕日」が描いていた時代、東京の人々が伸びゆく東京タワーを見ていた頃、名古屋には天にそびえるテレビ塔がとっくに完成していたのです。
なにも東京にケンカを売っているのではありません。僕は東京タワーも大好きなんです。
で、考えてみたわけです、名古屋テレビ塔と東京タワーの共通点を。答えは簡単。そのフォルムです。
ともに優美なAラインですよね。「塔」とか「タワー」と呼ばれる建造物にはいろんな構造があって、最近はビルに近い形状のものも多いですね。でもやっぱり、タワーは鉄骨をAラインに組み上げたものが断然カッコイイ! そう思いませんか? 札幌のテレビ塔もそうですよね。日本ではその3ヵ所くらいでしょうか。ルーツはやはりパリのエッフェル塔のようです。1889年にパリ万博のモニュメントとして建設されたとのことなので、日本より半世紀以上も先輩。凄いですね。名古屋テレビ塔のオープン時には“東洋のエッフェル塔”という宣伝文句だったそうです。Aラインタワー万歳! 東京では話題をスカイツリーに完全に持っていかれてますけど、東京タワーにはこれからも頑張ってもらいたいものです。
名古屋テレビ塔の自慢話をもうひとつ。
「エッフェル塔」と「名古屋テレビ塔」に共通しているけど、「東京タワー」と「さっぽろテレビ塔」には真似できないもの。さてそれは何でしょう?
答えは「色」です。東京タワーとさっぽろテレビ塔は紅白のカラーリングです。これは航空法で、60メートル以上の塔や煙突は赤白塗装が義務付けられているから。名古屋テレビ塔は航空法の制定前に完成されたから、その縛りをまぬがれクールな銀色塗装でいられるというわけ。本家のエッフェル塔は歴史を感じさせる、やや茶色がかった塗装がされていますね。ともに単色で、Aラインの美しさを邪魔しないカラーリングです。
そんな自慢の「名古屋テレビ塔」が、いま存続の危機に瀕しています。
テレビの地上デジタルへの移行に伴い、アナログ電波を送り続けてきたテレビ塔の役目が終ってしまったからです。今後の維持・改修には莫大なお金が必要。東京タワーと違って、観光地として入場料収入だけでやっていくことは困難で、解体・撤去の可能性が取り沙汰されているのです。
許せない!
ただの塔じゃないんです。名古屋のシンボル、みんなの心のオアシスですよ。そう簡単に壊していいはずがないじゃないですか。市民のほとんどはそう感じているはず。実際、市民レベルでも存続に向けて様々な議論がなされているようです。NPO法人・大ナゴヤ大学では「名古屋テレビ塔“終りは、はじまり”プロジェクト」を立ち上げ、アンケートや意見交換会などで、存続に向けてのアクションを行っています。素晴らしい!
一方、行政側は?と言えば、やっぱり煮え切らない。河村市長は「名古屋の大切なシンボル。絶対存続させる」と発言しているらしいが、名古屋市は「税金投入には市民の理解が必要」としてバックアップには及び腰な状態。えっ?市民の理解? そんなの得られるに決まってるじゃないですか! 理解を求めようとしてないだけでしょ? 住民投票でもなんでもすれば、圧倒的多数で可決されますよ(個人的見解ですが)。
民と官、それに市民一人ひとりが力を合わせれば、きっとなんとかなる。日本で最初の電波塔は、名古屋のみならず日本の大切な文化遺産のはず。100年後も200年後もその姿が見られるよう切に願います。
これからも名古屋テレビ塔問題はウォッチしていきます。またレポートしますのでお付き合い下さいませ。