「ヤングエース」(KADOKAWA)に2012年~16年まで連載された人気漫画『僕だけがいない街』。16年のテレビアニメ化、実写映画化を経て、Netflixオリジナルドラマとして12月15日から世界190カ国以上で配信される。母親を殺害した犯人を突き止めるために、時が巻き戻る“リバイバル”という現象によって18年前の小学校5年生時までさかのぼった藤沼悟は、当時起きた連続児童殺人事件に母親殺害の原因があると確信し、事件の謎を追っていく。今回のドラマは、原作完結後初の映像化ということでも注目されている。本作で主人公の悟を演じた古川雄輝に話を聞いた。
-3度目の映像化ということで、役づくりや撮影にどのように臨まれましたか。
原作が一緒でも、アニメ、映画、ドラマと全部違うと思うのですが、今回は原作にかなり忠実に寄せています。そして、大きな特徴が、ナレーションでストーリーが展開されていく点。映画だと“独り言”はあっても、ナレーションはあまり入っていなくて、ナレーションに当たる部分は表情や映像で見せています。その差が出ていますね。ただ、主人公は1人でいる場面が結構多いのですが、1人の時に1人でナレーションでずっとしゃべってしまうと、リアリティーがなくなってしまいます。そこで、(下山天)監督に「このせりふはやっぱりナレーションにしませんか」とか、その逆を相談したりしました。監督と一番話したのが、ナレーションとせりふの兼ね合いみたいなところです。監督とは『L-エル-』(16)という映画でご一緒していて今回が2回目。プライベートでも飲みに行ったり、マージャンをしたりと仲良くさせていただいているので、しっかりコミュニケーションを取りながらやらせていただきました。
-古川さんの声と落ち着いたナレーションも魅力的ですね。
お芝居をしている時とナレーションは、少しテンションが違うんです。あえて落ち着いた雰囲気にしている部分もあります。声に関しては、アニメを少し参考にしました。原作は声がないので、アニメを見たときに、なるほど、主人公はこういうナレーション、こういう声でやっているんだなと。そのイメージをキープしつつ、ここのナレーションはこんな感じかな、などと考えながら作っていきました。例えば、第1話の追い込まれていく場面で「くそーっ!」と言っているけれど、ナレーションは落ち着いているとか。雰囲気作りの上での監督の狙いもあると思いますが。
-悟の子ども時代の舞台は北海道の苫小牧。大人の悟のシーンには苫小牧は出てきませんが、古川さんも苫小牧に行かれたそうですね。
ロケ地を見学させていただいたのですが、かなり原作に近かったです。(悟が連続児童殺人事件の被害から回避させようとする少女)加代が住んでいる団地なんかも原作とそっくりでした。僕が演じている悟の子ども時代は、こういうところで生まれて育ったんだなと感じることができました。ロケ地が原作に近いというのはイメージをつかむ上で非常に役立つので、実際に見学に行けてよかったと思います。
-子役の内川蓮生くんと、2人で「悟」を演じていきますが、役作りについて話をしたことはありましたか。
それは特にないですね。子役だからということではなく、共演の役者さんとはそういう話はしないです。
-母親を取り戻すために、過去と現在を行き来して必死に突き進む悟。古川さん自身も大切なものを守りたいときには熱く突き進みますか。
その対象にもよりますが、このお話では母親の死が関わってくることですから、やっぱり必死になりますよね。自分も同じ立場だったら悟のように行動するんじゃないかと思います。
-今回の映像化の見どころを教えてください。
「母親を殺したのは誰だ」というテーマがずっと続き、「今後どうなるんだろう、誰が殺したんだろう」と犯人探しをしていくミステリー。主人公は至って普通の人なのですが、“リバイバル”という非日常的なものがいきなり入ってくることも、引き込まれる要因になっているのではないでしょうか。原作が本当に素晴らしく、確実に原作に近い状態で、12話でじっくり作り上げているので、原作のファンの方々にもとても喜んでいただけるのではないかと思っています。
-美しい映像がとても印象的ですね。
4Kでも撮っていますし、普通のドラマと違い、Netflixならではの、ちょっと映画っぽい雰囲気になっています。北海道が舞台になっているということもありますが、日本の風景が非常に美しく描かれています。原作も有名で、190カ国で配信されるので、日本の美しい風景を海外の方にもたくさん見ていただけると思っています。また、日本人の方が見ると、郷愁を誘う学校の風景などに共感する部分もあるんじゃないかなあと。僕自身、学校から帰宅した子どもの悟の中に自分が入っているような気持ちで、感情移入して見ているところがありました。
-日本国内だけでなく、特にアジアでも高い人気を得ている古川さんですが、さらに多くの海外のファンに見てもらえそうですね。
やはり、海外のたくさんの方にも見ていただけるのはすごくうれしいです。僕自身、今まで海外の作品にいろいろ関わってくることができましたし、英語がしゃべれるということもあり、将来的にはもっともっと海外でも活動できればと思っています。役者として一つステップアップできる作品に出会えたと思っています。
(取材・文・写真/千葉美奈子)