戦服将軍俑 戦服将軍俑

『日中国交正常化50周年記念 兵馬俑と古代中国~秦漢文明の遺産~』が3月25日、京都市京セラ美術館にて開幕した。

「日中国交正常化50周年記念 兵馬俑と古代中国~秦漢文明の遺産~」チケット情報

古代の中国では、王侯が亡くなると従者や周囲の動物も死者の墓室に収められる従死(殉葬とも)という風習が存在した。その代わりに埋葬されるようになったのが人や動物の姿を写し取った像「兵馬俑(へいばよう)」である。

1974年、中国・西安の畑で井戸掘りをしていた農民が偶然見つけた陶器の欠片。掘削を進めると、2000年以上前に作られた実物大の兵士や馬の陶器が大量に出土し、「20世紀最大の発見」と世界中が驚嘆。中国の歴史上初めて統一帝国を打ち立てた秦の始皇帝陵墓近くから出土した兵馬俑の数は約8000体と推測され、被葬者を守るため埋葬されたと考えられる。

本展の見どころは、何といってもズラリと並ぶ計36体もの兵馬俑だ。中でも、一級文物(中国での国宝にあたる)「将軍俑」に注目を。高級軍人を模した11体の俑で、高さ196cmもの体躯を誇る「戦服将軍俑」は日本初公開のもの。他にも弩(いしゆみ)を構えて待機する「跪射武士俑」など迫力ある俑からは、秦国の強靭な兵力が想起される。それぞれ実在した人物を再現しているとされ、一体たりとも同じ表情はない。

秦国統一前夜の春秋戦国時代では、当時の騎兵の姿を分かりやすく示した高さ22cmの「騎馬俑」のように、小ぶりなものが主流。その後、秦の始皇帝時代に等身大へとサイズアップし、続く前漢時代では再び小さな兵馬俑へと移り変わっていった。中国史上、唯一等身大の兵馬俑だったのが天下統一を成し遂げた秦の始皇帝時代なのだ。本展が示すテーマは、この3時代の兵馬俑を通して中国史を振り返ること。監修を務めた鶴間和幸・学習院大学名誉教授は、「私たちが知らないことはまだまだある。兵馬俑を通して、こんな世界があったのかと歴史の面白さに触れてください」と語る。

また、馬の俑も数多く、秦の人々と馬の強いつながりも感じられる。実に36年ぶりの日本展示となった一級文物「鎏金青銅馬」は、漢の武帝から姉に贈られたとされる秘宝。古代中国の最高峰の技術による青銅製の車馬「2号銅車馬」では始皇帝の巡行の様子を垣間見ることができ、その威光を感じ取れることだろう。他にも秦の時代を分かりやすく楽しめる漫画『キングダム』の名場面を集めたコーナーも。兵馬俑の姿から悠久のドラマに生きる人々の力強い生きざまを見届けてほしい。開催は5月22日(日)まで。

取材・文・撮影:後藤愛