上総広常役の佐藤浩市

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」。4月17日放送の第15回「足固めの儀式」では、源頼朝(大泉洋)の息子・万寿(後の2代目鎌倉殿・源頼家)の足固めの儀式が行われる中、頼朝政権自体の足固めの陰謀が進行。その結果、頼朝を支えてきた有力御家人・上総広常が命を落とすこととなった。これについて、ここまで広常を演じてきた佐藤浩市がコメントを発表した。

 まず、「『何か、俺が間違っていた部分があるかも知れねぇ』という感じです」と広常の最期について言及した佐藤は、その意図を次のように説明する。

 「広常という人は決してすごく学のある人ではなかったにせよ、頭の悪い人ではないんです。戦のやり方も分かっている、人への食い込み方も分かっている。でも『何か、俺は間違ったのか』っていうことをふと思ったときに、(北条)義時を見て、『おまえは俺になるんじゃねぇ』という思いが湧いて、最期のああいう笑顔になったんじゃないかなと思います」

 一点補足すると、劇中で親しく酒をくみ交わすほどの関係を築き上げた広常の死が、主人公・北条義時(小栗旬)に与える影響について佐藤は、3月13日に行われた「NHK文化セミナー『鎌倉殿の13人』スペシャルトークin富津」で次のように語っている。

 「史実でもそうであるように、当然、あるとき広常と義時の別れがあるわけで。その別れのときの義時の立ち位置、心情的なものがどうなるか、ということに対して非常に大きな影響を与える距離感になってきます」

 また、文章を稽古するシーンではこわもての広常の意外な一面も垣間見えたが、これについても佐藤は「最初に、本筋とは何か全然関係のないところで、広常のキャラクターが見えるようなシーンがあったらいいね、なんてことを演出陣と話していました。それを三谷幸喜さんが聞いて、できたシーンだったんです」とコメントの中で誕生秘話を披露した。

 続けて、この回におけるそのシーンの意味について、「どこか粗野な上総介が、全く童心のように、未来に対する希望として、それを書いている姿、やっている姿、そういう希望を無残に壊されてしまう悲しさがあると思います」と見解を述べた。

 そして最後に、「実際のところ僕らは武士、もののふの生活というのは、伝聞や歴史に残ったものでしか分からないので、正しいか正しくないかは別にして、僕らの世界にも常に通じるものという、そういうふうな思いとして映ればいいかなと。それがとてもうまくできたから、逆にいえば、広常のたどった運命とつながってみると、ものすごく悲しくなっているんじゃないかと思います」と締めくくっている。

 なお、この第15回については、佐藤がゲスト出演した4月16日放送の「土曜スタジオパーク」で、VTR出演したキャスト陣が「出演者全員が認める神回」(大泉)、「一回、最終回を迎えるぐらいの。全ての人の心をわしづかみにする」(山本耕史)、「台本を頂いた時、ものすごく興奮した。震えがくる回」(小栗)と絶賛していた。

(構成・井上健一)