LDHのみなさんからの希望ですぐに実現したコラボキャス

――お話を伺っていると、合弁会社を立ち上げたという点も含めて、LDHとサイバーエージェントで役割をハッキリと区切るのではなく、一緒にサービスを作り出しているという印象が強いですね。具体的な企画の制作の流れ、その中での鈴村さんの役割について教えてください。

鈴村 LDHさんとサイバーエージェントのそれぞれ主な役割として、アーティストマネジメントやコンテンツ制作に関してはLDHさん、プロダクトの開発や設計、運用の部分をサイバーエージェントというのがベースです。

ただ、そこでハッキリと分けられない部分は多いですし、LDHさんとはかなり頻繁に会議をして、コロナ以前は特に互いのオフィスを往き来しながら意見交換をしてきました。

私の役割としては、多くの関係者が様々な目線で「これが良いと思う」とおっしゃる中で、ユーザーの方、アーティストの方々が「使いやすい」と思うものを意思決定していくというのを大事にしています。

(提案のあった)全てのサービスをやることが必ずしもユーザーにとって良いことというわけではないので、ユーザーファーストを大事に決めていくようにしています。

――普段、表舞台で活動しているグループ単位だけでなく、グループの垣根を超えたコラボレーションが見られ、まるでプライベートのような“裏”のやりとり、人間関係を見ることができるのは、ファンにとってはすごく嬉しいことだと思います。このコラボキャスというサービスはどのように生まれたんでしょうか?

鈴村 前身のLDH TERMINALでも、CLリリース当時もキャス配信は1人での配信しかできなかったんですね。

CLにリニューアルしたタイミングで、アーティストのみなさんがかなり高い頻度でキャス配信をしてくださっていて、もしコラボで2人、3人と人数を増やして配信をすることができたら、企画ものも実現させやすくなるし、ひとりだけで話すよりも会話が盛り上がるということをLDHさんからご意見としていただいていました。

それはぜひやりたいし、ファンの方にとっても見たいものを見られるだろうということで、お話をいただいてすぐに「やりましょう!」と決まりました。

EXILE TAKAHIROと三代目 J SOUL BROTHERS登坂広臣など、グループの垣根を超えたコミュニケーションが楽しめるコラボキャス。

――ここでもすぐに「やりましょう!」と。リリース後に付随させていったサービス・機能が非常に多いですね。

鈴村 やはりサービスを実際に使っている当事者であるアーティストさんから「こういう機能があったら嬉しい」という話は頻繁にいただきます。

直近だと、エンジニアから意見が出たもので、キャス配信中に仮想背景をつけることができる機能がありまして。LDHさんにも「こういう機能があったら使いますか?」と相談した上で、実装に至ったんですが、背景設定して、ラジオ配信として活用いただいたり、会話のネタにしていただいたりして、より盛り上がる工夫をしていただいています。

――LDHのファンの方の目線を取り入れるという点で、工夫されていることなどはありますか?

鈴村 SNSなども見ていますし、CLのお問い合わせに声をいただくこともあります。LDHのファンの方は熱量が高い方が非常に多いので、「もっとこうしてほしい」とか「こういうのがあれば」という声をいただく機会がすごく多いんです。

あとはユーザーインタビューという形で、実際にCLをご利用いただいている方にお話を聞いて「ここをこうしてほしい」と「ここは満足している」といったご意見をリサーチさせていただき、そこから開発につなげていくという取り組みもしています。

――お話を伺っていて、LDHのアーティストとファンの関係性と、こうした“ファンテック”サービスの親和性の高さがうかがえます。

鈴村 おっしゃるとおり、非常に親和性が高いなと思います。LDHの方々は、ファンの方々のことを「FAMILY」と呼んだりしますし、ファンの方々も、LDH内の自分の好きなアーティストやグループだけを応援するというより、姉妹グループなども含めて、LDH全体を応援するという風潮があるんですよね。

そういう意味で「CLに来たらLDHのみなさんに会える」というアットホーム感を持っていただけるということは感じています。

――アーティストとしての歌やダンスといった内容に加え、トークにゲームやクイズ、英語を学ぶという企画まで、コンテンツがバラエティ豊かですね。

鈴村 基本的にコンテンツの内容に関しては、アーティストさんと密にやりとりをしているLDHさんの主導で企画している部分が多いですが、キャス配信やペイパービューの一部に関しては「こういうことができないか?」と話し合いながら一緒に作らせていただいている部分もあります。

例えば生放送やペイパービューで使える応援スタンプという機能があるんですが、それは話し合いの中で生まれたものですね。

――コンテンツを配信する同様のプラットフォームは次々と誕生していますが、鈴村さんが開発からリリースへと関わってきて、CLならではの強み、魅力はどういった部分にあると思いますか?

鈴村 先ほどもお話ししましたが、ファンとアーティストという双方向にユーザーがいるというのがサービスの特徴のひとつだと思っています。LDHさんと一緒にやっているからこそ、アーティストの声、ファンの声のどちらも吸い上げながら、どちらの方々も使いたくなるようなものを実現できるというのが強みかなと思っています。

多くの人が使うTwitterやInstagramには「誰もが使いやすい」部分があると思いますが、CLはあえてLDHのアーティスト、ファンの方々に特化する形で、彼らが使いやすく喜んでくれるものを追求できるという点がファンサービスとしての強み、魅力としてあると思います。

とにかくファンとアーティストの方々が使いやすく、ここでしか出来ない体験が出来るというのは常に意識しながら運営しています。

――ユーザーファーストという部分で、ファンのユーザビリティを考えるだけでなく、アーティスト側のユーザビリティを大切にするということですが、このコンセプトは開発当初からお持ちだったんでしょうか?

鈴村 そうですね。リリース当初から「アーティストのみなさんにとって使いやすいサービスにしたい」という思いはありました。ただ、実際に使ってみての感想などを聞いた方がよりリアルだったので、そうした意見を採り入れながら進めてきたという言い方が正しいかもしれません。

コラボ配信ひとつとっても、どうやって招待するのか? 招待されたらどうやって入るのか? といったユーザビリティの部分まで意識しています。使ってもらいながらご意見をいただいてアップデートさせていくということの方が多かったですね。

キャス配信にせよ、アーティストのみなさんがやればやるほど、ファンは盛り上がっていくという環境だったので、そうした中で進められたのは非常にありがたかったです。