青柳和彦役の宮沢氷魚 (C)NHK

 NHKで放送中の連続テレビ小説「ちむどんどん」。沖縄の本土復帰50年の節目に送るのは、復帰前の沖縄で四人兄妹の次女として生まれ育ったヒロイン・比嘉暢子(黒島結菜)が上京し、料理人の道を目指す50年の物語だ。5月30日からの第8週では、東京のレストランで修業を始めた暢子が、子どもの頃に沖縄で知り合った青柳和彦と再会する。成長した和彦を演じるのは、「エール」(20)に次いで2度目の朝ドラ出演となる宮沢氷魚。撮影の舞台裏や作品に懸ける思いを語ってくれた。

-暢子と和彦がついに再会します。和彦の子ども時代は別の俳優が演じていたので、宮沢さんの登場はこの第8週からになります。2人が再会するシーンを撮影したときの感想を聞かせてください。

 僕のクランクインから2、3日目ぐらいに撮ったんですけど、黒島さんや現場の雰囲気がすごく温かかったので、気持ちよく再会することができ、とても明るく楽しいシーンになりました。序盤でそういういいシーンを撮れたことがとてもうれしく、いい流れでその後の撮影につなぐことができました。

-朝ドラは「エール」以来、2度目の出演になりますが、今回はどんな違いがありますか。

 「エール」のときは、出番が最後の2週間半くらいだったので、その期間でグッと詰めてお芝居をすることができました。でも今回は、全編を通して役を作っていくことになります。その喜びと同時に、どんなふうに和彦と一緒に成長していこうかという難しさがあります。1年もかけて撮影する作品は朝ドラ以外ほとんどありませんので、役作りの点では「エール」とは全然違ったものがあります。

-和彦は新聞記者として働いているそうですね。

 学芸部の新聞記者なので、カルチャーを取材しながら、沖縄の歴史や文化を調べて本を書きたいという大きな夢を持っています。そのため、与えられた仕事に取り組むかたわら、目標に向かって地道に経験を積んでいきます。最初の頃はいろいろとうまくいかず、上司の田良島(甚内/山中崇)さんに助けてもらうことも多いのですが、もまれながら少しずつ成長していくことになります。

-今後、和彦は暢子との関係を深めていくようですが、暢子役の黒島さんの印象を教えてください。

 お会いするのは初めてですが、以前から黒島さんが出演している作品はよく見ていたので、ご一緒できることはうれしいです。僕よりも若いのに、お芝居だけでなく、たたずまいも堂々としていますし、作品に対する思いも強く、みんなをまとめる力もある。座長にふさわしい方で、ヒロインが黒島さんで本当によかったと思います。

-実際に黒島さんと共演した感想はいかがでしょうか。

 朝ドラって、時代が急に飛ぶことがあるんですよね。週が変わった途端、5年がたっていたり。でも、描かれていないその間も、みんな成長し、人間関係が少しずつ変わっていく。そういうとき、僕もそうなんですが、普通は「ここは5年たっているから、たぶんこういうことがあって…」と探りながら入っていくのに、黒島さんはそこをきちんと調整できるんです。撮影の順番も、シーンが前後することは当たり前なのに、全く影響されている様子もありませんし。たぶん、ご自身の中でしっかりしたビジョンがあるんでしょうね。なかなかできることではないので、見事にコントロールされているな、と思いながら見ています。

-ここまでのドラマをご覧になった感想を聞かせてください。

 とても明るく、笑顔になれる作品だと思います。沖縄を舞台にした最初の数週間は、風景が美しく、朝から気持ちが晴れやかになる部分もありながら、生活が苦しかった1970年代の現状も分かりやすい形で描かれていました。沖縄というと、今は観光地として明るく楽しいイメージがありますが、以前はとても貧しい時期があり、苦しい中、人々が一生懸命生活していた。そういう部分を踏まえつつ、前向きに強く生きる家族や人々の姿がしっかりと描かれていたと思います。

-宮沢さんが登場する第8週は、中心となる舞台が沖縄から東京に移っていますが、沖縄とのつながりはどう描かれるのでしょうか。

 横浜の鶴見や東京が物語の中心になりますが、和彦は沖縄のことを皆さんに伝えることをライフワークにしているので、沖縄とつながっていきます。暢子も家族が沖縄に残っているので、沖縄との関係は保たれたまま物語が進んでいきます。

-三線の特訓をしたと聞きました。演奏するシーンもあるのでしょうか。

 もともと、多少は弾けたので、少しでも自分に沖縄の文化を取り入れたいと思って練習しました。今のところまだどうなるか分かりませんが、弾く機会があったらいいですね。

-最後に、宮沢さんご自身の沖縄に対する思いを聞かせてください。

 幼い頃から沖縄には何度も訪れていて、今まで少なくとも14、5回は行っていると思います。最初は海で泳いだりするのが楽しかったんですけど、成長するにつれて沖縄の歴史や文化にも興味を持ち、ひめゆり記念館なども巡るようになりました。そういう意味では、僕はまだ28歳ですが、沖縄の変化や、沖縄がどのように日本と世界に認知されていったのかという過程は、自分なりにしっかり見てきたつもりです。最近も別のお仕事で沖縄を訪れるなど、ここ1、2年、沖縄との縁も深く、本土復帰50年の記念すべき年に沖縄を題材にしたこの作品に参加できることに運命的なものを感じています。沖縄に対する自分自身の好奇心を忘れずに演じていきたいと思います。

(取材・文/井上健一)