どれも手頃な価格なので大人買いできる利点を生かして、手書き文具を揃えてみるのも楽しい

【木村ヒデノリのTech Magic #114】 最初にことわっておくが、ノスタルジー的な側面から手書きを薦めるつもりはない。筆者は基本的になんでもデジタルで済ませたいタイプだ。ほとんどの資料はデジタルの方が何かと活用しやすい。しかしそうした状況だからこそ手書きの何が良かったのかが鮮明になってきている。今回は鉛筆を中心に書いていくが、これはデジタルペンを含めた手書き全般に言えることだ。現代だからこその文具や手書きの活用法を考えてみたい。

「書く」というトレーニング、感覚を鍛える手書きの利点

手書きの何が良いのか。それは書くという日常的な行為で常に脳を鍛えられるということである。これが大人は今からでも再び手書きを始めた方が良い最大の理由だ。手の感覚や視覚を使って力をコントロールするというトレーニングは実は書くという行為以外でなかなか経験することがない。キーボードタイピングは指でキーボードを触り、それによって文字を生成しているが、思った通りに線を引くこととは似て非なる行為だ。一方、手で書くという行為はイメージした通りに手指をコントロールし、適切な力で書いた後目で確認するという一連の流れになる。

書いている最中は紙と芯が擦れる感覚や芯の弾力の感覚など、いくつかの要素を無意識のうちに考慮する。こうした体性感覚や運動感覚を処理する行動は記憶のパフォーマンス向上に役立つし、書いてアウトプットしたものを見て再インプットする行為は長期記憶化されるという研究結果もある。さらに手書き文字に含まれる歪みや擦れといったノイズは脳の後頭葉を活性化する可能性も示唆されているので、アイデアを出すような職業の人は特に手書きを日課にするべきだろう。また、別の研究では手書き習得と言語・認知能力の発達には大きな関連があることもわかっている。こうしたからも手書きを見直す(ハックする)ことは現代人の生産性を高める上で重要と言えるのではないだろうか。

筆記具の中でも鉛筆をすすめる理由

筆記具の中でも鉛筆は、最も多くのコントロール要素を含むので大人におすすめしたい。ボールペンでもシャープペンシルでもないのは、文字の成り立ち上、これらが日本語に向かないからだ。早いうちからボールペンやシャープペンシルを使ってしまうと、指先だけの動きで書くようになってしまう。これだと小指球を軸に縦画や横画を引くことがなくなるため、字も汚くなるし、脳への情報量も少なくなってしまうので良くない。アルファベットなら横向きの力に指先で曲線を描く動きで書けるのでこうはならないが、日本語の場合は特に注意が必要だ。

指先だけで書く癖は鉛筆で矯正できる。鉛筆は筆記具の中でも太めなので字が大きくなり、自然と手指全体で書くようになるからだ。これも鉛筆をおすすめする理由である。実用性ではボールペンやシャープペンシルに劣るが、そもそも記録だけならタイピングしたほうが早いので前述したような目的で毎日手書きをするなら鉛筆がベストだろう。最近は持ち方を自然と正しい持ち方にしてくれる鉛筆などもあるので、この機会に持ち方から見直してみるのも良いかもしれない。

大人になったから使ってみたい、手書きをハックする筆記具の数々

以上のような理由から手書きを再び取り入れ始めた筆者だが、探してみると子供の頃にこれがあったら!という筆記具が見つかったのでいくつか紹介したい。まずは鉛筆の角度を変えて削れる鉛筆削り。

ゆるい角度は主に芯の柔らかい色鉛筆用だが、通常の鉛筆でも使える。大人のトレーニングにおいても2B以上の濃さが推奨されるので、折れづらい角度に削ると最初は書きやすいかもしれない。さらに、芯が5.3mmという極太のジャンボ鉛筆というのも存在する。本来デッサンやスケッチに使うものだが、書く行為をリセットする意味で今まで使ったことのないこれを選ぶのも良いかもしれない。実際筆者はこれの4Bを使っているが、大きめのノートにこれで図や絵も含めたアイデアを書くと気持ちが良くて気に入っている。こちらもSTAEDTLERの鉛筆削りを使えば自由な角度に削ることができる。

また、芯部分のみのノック式鉛筆も存在する。どうしても鉛筆に違和感がある方は芯を太くするだけでも書くという行為をハックできるだろう。個人的には筐体が木のものをおすすめしたいがシャープペンシルのようなものもある。芯が丸くなったら専用の芯削りで削って使う。実際この削る時間も脳にポモドーロ的な休憩を与えてくれるそうで、集中力が持続しやすい。

毎日できるから効率が良い、40代からはじめたい手書きのハック

鉛筆を使うだけで、文字を書くという行為に脳を使うさまざまな要素を入れることができる。毎日メモなどを手で書くだけで無意識にトレーニングできるという点がミソだ。また、字が上達すると毎日小さな成功体験を感じられるという副次効果もある。手書きが楽しくなってきたら文字だけでなくデッサンや水筆紙を使った書道などもやってみるとさらに効果的だろう。

このようにアイデアをまとめる際やメモなどで手書きを使うだけで継続的な生産性の向上が期待できる。デジタルをフル活用しながら手書きでクリエイティブなマインドも高めていくのがビジネスパーソンの未来像かもしれない。(ROSETTA・木村ヒデノリ)

木村ヒデノリ

ROSETTA株式会社CEO/Art Director、スマートホームbento(ベントー)ブランドディレクター、IoTエバンジェリスト。

普段からさまざまな最新機器やガジェットを買っては仕事や生活の効率化・自動化を模索する生粋のライフハッカー。2018年には築50年の団地をホームハックして家事をほとんど自動化した未来団地「bento」をリリースして大きな反響を呼ぶ。普段は勤務する妻のかわりに、自動化した家で娘の育児と家事を担当するワーパパでもある。

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