2020年にテレビ朝日系で放送された連続ドラマ「妖怪シェアハウス」は、気弱な性格で、周りの空気ばかり読んで生きてきた主人公の澪が、妖怪のシェアハウスで暮らす中で、たくましく成長する姿を描いて好評を得た。あれから1年半、シーズン2となるドラマ「妖怪シェアハウス-帰ってきたん怪-」に続いて、『映画 妖怪シェアハウス-白馬の王子様じゃないん怪-』が、6月17日から公開される。ドラマから続けて主人公の澪を演じる小芝風花に、澪のキャラクターや、妖怪たち=共演者の印象、映画化への思いなどを聞いた。
-このシリーズのことを最初に聞いたとき、どんなふうに思いましたか。
最初に「妖怪シェアハウス」という作品の撮影と聞いたときは、「どういうことですか?」と思いました(笑)。でも、もともと妖怪とか、ファンタジーの要素がある作品がとても好きだったし、配役も個性的なメンバーで、監督とも二度目のお仕事だったので、「すごく楽しそう。楽しみ」と思いました。
-主演をすることで、何か心掛けたことはありましたか。
私は、性格的に「引っ張っていくぞ」というタイプではありません。特にこのシリーズは、周りが先輩方ばかりですし、澪が妖怪さんたちに助けてもらいながら成長していくように、私も皆さんに助けていただきながら成長できたらいいなと思って臨みましたので、そんなに気負うことはありませんでした。現場が楽しくなればいいなと、いつも思っているので、スタッフさんたちとコミュニケーションを取ることを心掛けています。
-ドラマから発展して映画化が決まったときの気持ちは? 共演の皆さんはどんな感じでしたか。
映画化が決まってから撮影するまでの間に結構時間がありましたが、最初にお話を聞いたときに、すぐにグループLINEで、「ドラマの続編も、映画化も決まりましたね」「すごい! やったね」みたいになって、みんなで盛り上がりました。頻繁に連絡を取り合うわけではないのですが、1年半ぶりに本読みでお会いすると、驚くほどすぐに感覚が戻って、和気あいあいとした雰囲気になりました。
-演じた目黒澪というキャラクターについてどう考えていますか。また、ご自身との共通点はありますか。
澪はすごく真っすぐで、純粋だと思います。普通、あんなにだまされたり、周りに振り回されたりしていたら、性格がゆがんでしまってもおかしくないのに、それでも友だちを信じて守りたいと思う心を持っています。だからこそ、妖怪さんたちが、「澪は私が守ってあげなきゃ」と感じて、お世話をしてくれるのだと思います。その真っすぐさと純粋さはとても大事だと思います。あとは、よくないものを呼び寄せてしまう、どうしようもないほど不幸な体質も(笑)、笑顔よりも困った顔が似合うところも、澪らしさかなと思います。キャラクター的には、自分とは違うと思いますが、でも、澪は小説で、私はお芝居でというように、やりたいことがはっきりしているところは共通していると思います。
-澪の表情の変化が印象的でした。表現を工夫することを考えたりはしますか。
工夫というより、お芝居をするときは、相手のお芝居をよく見聞きすることを意識しています。特に、こういうリアクションが大きい役のときは、どのせりふで喜怒哀楽を表すかというのは、台本を読んで自己完結をしていると分からないことが多いです。なので、自分のせりふを話すことも大事ですが、相手のせりふのどの言葉で、感情が変わるのかというのは、常に意識しながら演じています。
-妖怪たちとのやり取りを見ていると、アドリブも多いように見えますが、何か印象に残るアドリブはありますか。
いっぱいあります(笑)。今までアドリブは苦手でしたが、ちょっと皆さんのまねをしてみたり、会話をしたりするのはすごく楽しいと、このシリーズで初めて思いました。例えば、(沼田飛世=ぬらりひょん役の)大倉(孝二)さんのアドリブは、日常に溶け込んだぼやきみたいな感じなので、アドリブの出し合いではなく、日常会話みたいになります。ご飯を食べているときに、(和良部詩子=座敷)童子さん(池谷のぶえ)に「みそ変えた?」と言ってみたり…。アドリブというと、いかに面白いことを言うかを競うみたいに思いますが、そうではなくて、あくまで日常会話の一つであり、その一言によって、より生活感が増したり、キャラクターが映えるようなアドリブをしてくださるので、とても楽しいです。
-コメディエンヌと呼ばれることについてはどう思いますか。
ちょっと照れくさいというか、申し訳ないと思う気持ちもあります。ただ、自分には個性がないと悩んだ時期があったので、そういう肩書を付けていただけたことは、すごくうれしいです。でも、私自身が面白いことをしているというよりは、周りにいる、個性的で面白い人たちがお芝居をしてくれて、その人たちに振り回されてリアクションをするという感じです。なので、そういうふうに言っていただけるのはすごくうれしいですけど、それは周りのキャストの皆さんが素晴らしいからだと思います。とてもありがたいです。
-今回は、人間とAIとのかかわりや恋が描かれていました。ホアキン・フェニックスが主演した『her/世界でひとつの彼女』(13)という映画もありましたが、こういう関係をどう思いますか。
現代に生まれる妖怪はこんな感じなんだろうなと思いました。今は、何か困ったことがあったら携帯に頼って調べ物をしたり、アプリがないと電車の乗り換えも分からないし、携帯がなければ外には出られないほど依存してしまっています。そんなふうにAIに飲み込まれていく世界というのが、『ターミネーター』(84)やいろんな作品で描かれてきましたが、それがよりリアルになりつつあると思います。この映画には、AIが進化して本当の愛を知ることがあるかもしれないという、大きなテーマが隠されているので、澪がAIとの関係をどう決断するのかも、見どころの一つになっています。
-最後に、この映画の見どころと、観客への一言アピールをお願いします。
とにかく、何も考えずに見て笑っていただける作品です。オリジナルの妖怪をはじめ、たくさんの妖怪が出てくるので、楽しんで見てくださる小さいお子さんも多いです。ぜひ、ご家族で見ていただきたいです。9割方はふざけているんですけど、1割は真面目なところがある、そのバランスの良さが、このシリーズの魅力だと思います。社会派ホラーコメディーです(笑)。
(取材・文/田中雄二)