「鎌倉殿の13人」第25話から (C)NHK

 NHKで放送中の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」。6月26日に放送された第25回「天が望んだ男」では、死が近づく源頼朝(大泉洋)の姿が描かれた。脚本の三谷幸喜はこの回について、インタビューで「厳かに頼朝をみとるような回」と語っていたが、随所に今後の伏線になりそうな出来事も散りばめられていた。中でも筆者の目を引いたのが、女たちの姿だ。

 まずは、自宅で双六に興じる夫・北条時政(坂東彌十郎)を、「御所へ行かなくてよいのですか」と問い詰めたりく(宮沢りえ)だ。

 ここでりくは、「呼ばれてねえから」とのんきに返す時政に「比企の一族は、若君を取り込んでお子まで生まれて。このままでは、鎌倉は乗っ取られてしまいます」といら立ちをぶつける。

 りくは、これまでも、例えば第21回の、自分の出産祝いに北条家が勢ぞろいした場で、「皆さん、いささかたるんでおります。もっと北条を盛り立ててゆくのです」と一族の尻をたたくなど、たびたび野心をのぞかせてきた。

 この回の後半では、頼朝にも「あなたさまは、今や、日の本一の軍勢を持つお方。そのお力をもってすれば、朝廷だっていうことを聞きましょう」とけしかけている。

 一方、りくがライバル視する比企一族も、この回、乳母を務めた頼朝の嫡男・源頼家(金子大地)と比企能員(佐藤二朗)の娘・せつ(山谷花純)との間に生まれた長男・一幡を頼朝に引き合わせるなど、北条家に対抗心を燃やしている。

 この比企一族と源氏との接近を画策したのも、当主の能員というより、もともとはその妻・道(堀内敬子)の発案だ。

 道はこれまでも、一族の娘・里(三浦透子)を源義経(菅田将暉)の妻にしたり、比奈(堀田真由)を頼朝の下に送り込んだり(結局、義時の妻になったが)と、繰り返し源氏への接近を図り、権力に執着する様子をうかがわせている。

 つまり、北条と比企との出世競争は、幕府の御家人である両家の争いであると同時に、その裏に隠れた女たちの争いでもあるわけだ。むしろ、男よりも女たちの方が積極的に争っているようにすら見える。

 この回では、時政がりくに「鎌倉殿は、北条の婿。あのお方が急に亡くなりでもしない限り、北条は安泰じゃ」と語る一幕もあったが、その鎌倉殿=頼朝が亡くなれば、この言葉の裏付けはなくなる。

 そうなると、北条と比企が激しくぶつかることが予想され、今後繰り広げられるであろう御家人たちの権力闘争では、りくや道など、女たちの野心も物語の行方を大きく左右するに違いない。

 気になるのは、北条と比企の家同士の争いだけではない。頼朝の次男・千幡(後の源実朝)の乳母となった義時の妹・実衣(宮澤エマ)も、第23回で、頼朝と万寿(頼家の幼名)が曽我兄弟の謀反で命を落としたと聞いた(誤報だったが)際、ちらりと野心をのぞかせる瞬間があった。

 もし、実衣の野心がさらに膨らめば、北条家内部でも女同士の争いが繰り広げられる可能性がある。

 そして、その女たちの野心を受けて立つのは、おそらく頼朝の妻・政子(小池栄子)になるはず。そのとき、政子はどんな行動を取るのか。さらに、義時の妻となった比企一族出身の比奈の立場も気になるところ。

 りくから「あなたに母上呼ばわりわれる筋合いはございません」と敬遠される一方、政子からは「北条と比企を結ぶ架け橋」と例えられた比奈は、北条と比企の間でどう立ち回るのか。

 頼朝を厳かにみとる一方で、くすぶり続けてきた女たちの野心にも本格的に火が付きそうな気配。火花散る女同士の戦いを予感させる第25回だった。

(井上健一)