前年割れが続いていたタブレット端末市場だが、2017年4月にプラスへ転じて以降は回復しつつあることが、家電量販店・ネットショップの実売データを集計する「BCNランキング」から分かった。ここでは過去2年の市場動向から、市況回復のポイントは何なのか、その要因を探ってみた。
タブレット端末の販売台数伸び率(前年同月比)がマイナスで推移していたのは、約2年半にわたる。とくに16年はすべての月で前年割れが続き、2ケタ減が大半を占めていた(図1)。5.5インチのiPhone 6 Plusが発売されてから、スマートフォンの大画面化が進んだことなどが影響したもようだ。このような状況で、17年4月から台数伸び率が好転したのは、その前月末に、アップルが最安となる3万円台の9.7インチiPadを発売したことが大きく作用した。この価格帯はタブレット端末全体の平均単価と同等で、従来のiPadシリーズと比べるとコストパフォーマンスが高く、発売以降はシリーズ別で販売台数トップを維持している。
ただし、9.7インチのiPad最安モデルだけが市況好転の要因ではない。15年12月と17年12月のインチサイズ別構成比を比べると、9インチ台は12.7%から23.7%、10インチ台以上は22.3%から37.8%まで増加(図2)。大型のサイズ帯が2年で、それぞれ10ポイント以上も比率を高めている。実際、17年に発売されたタブレット端末の9割以上が9.6インチを超える製品で、各社とも大画面にシフトしているのだ。
そして、ここでポイントとなるのは画面サイズは大きくなっているものの、全体の平均単価は3万円台をキープしている点だ。画面サイズが大きいほど価格は高くなる傾向にあったが、価格据え置きで大画面化がすすんでいるのは、それだけ競合が激化していることを示唆するものとなった。実際に9インチ以上の単価は、2年前と比べて約2割も下落している。
現在、市況は回復基調にあるとはいえ、市場成熟化がすすむなかで新たな成長をどう促進していくのか、これからが正念場を迎える。スマートフォンとパソコンの中間に位置する存在として、昨年は大画面にシフトし一定の成果へと結びつけたが、今後はどのような価値を見出していくのかが重要になってくるだろう。(BCNアナリスト 山口渉)
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。