【木村ヒデノリのTech Magic #134】 中華製ロボット掃除機の進化がめざましい。なんとなく低価格で機能性もイマイチという印象を持っていた読者は認識を改めた方がよいかもしれない。筆者自身は2009年からロボット掃除機を使い続けてきたが、2022年現在、中華製ロボット掃除機の機能性は完全にルンバを超えている。それを確信させてくれたのは、エコバックス「DEEBOT T10 PLUS(以下、T10 PLUS)」だ。
アプリとロボット両方の完成度が高いエコバックス
「T10 PLUS」は同社フラッグシップの「X1」に次ぐDEEBOTシリーズの高機能機だ。水拭きや音声アシスタント機能など、上位機種が持つ機能と良い香りを出しながら清掃してくれるエアフレッシュナーという独自機能を備える。
エコバックス製品のすごいところは、アプリの使い勝手からロボットの動きまで細部に渡り行き届いたユーザー体験が提供されている点だ。例えば、初期設定の際には現在何をしているか音声でも教えてくれるので非常にわかりやすい。
iRobot製のルンバでは設定段階でうまくいかないことが多かったので、細かい点だが重要だろう。その他のロボット掃除機と比べても、もっともわかりやすいと感じた。
また、ロボットの挙動も他よりすぐれている。現在ほとんどのロボットがカメラと複数のセンサーを備えているが、筆者宅のキッチンではどれも清掃時トラブルが起きることが多かった。しかし、T10 PLUSはケーブルなどを巻き込むこともなく、難所であるカウンターチェア下でも止まらない。精度の高いマッピングとAIを使った認識力で複雑な部屋の状況でもトラブルなく清掃を終えることができた。
通ったルートをリアルタイムで表示してくれるのも良い。ルンバを使っている際にストレスだったのが、どうしてそのルートを通っているか、本当に効率が良いのかがわからない点だ。T10 PLUSは通った軌跡から理由が推測できるので自分で部屋の改善もできて便利だった。
なぜここまでルンバを名指しするのか
ここまでルンバの名前を挙げるのには理由がある。ルンバは900シリーズ以降、明らかに性能が落ちたと感じるからだ。清掃音は大きくなり、ゴミが吸い取られないことも多くなった。2009年からずっとルンバを使い続けてきているが、ユーザー体験に不満が出てきたのはs9+に変えてからだ。挙動がおかしいと感じることが増え、コーナーブラシの毛が抜けてなくなるのも尋常ではなく早い。
カメラがないからなのかとj7+も購入して試したが障害物を避けるせいで掃除されない部分が増え、部屋はかえって綺麗にならない状況に。この現状を踏まえ、長らくファンだった筆者だからこそ言わせてほしい。今のルンバはおすすめできない。どうしてもということであれば、まだ良いと感じられていた900シリーズの980か960にしてほしい。
自動洗浄はできないが水拭きも優秀
T10 PLUSにはモップの自動洗浄機能は搭載されていない。そのため毎回洗って乾燥させる手間はあるが、週1で床を水拭きするような使い方であれば十分だろう。
水拭きの方法も前後に動く振動式で上位機種のX1のように回転しないが、止まった状態だとロボットが前後に動いてしまうほど力強く前後に動くので清掃力は十分だ。これまでブラーバなど水拭き専用ロボットでは振動や水のマネジメントが十分ではないように感じることがあった。しかしT10 PLUSはしっかりと床を綺麗にしてくれる上に拭き跡が気にならないので、清掃と水拭きが同時に完了する意味でも非常に良いと感じた。
また、T10 PLUSはゴミを吸い込んでから拭くという想定のため、パッドには毛を取るような突起がない。このため手入れが非常にしやすく、その点も良いと感じた。
移動しながら良い香りを拡散してくれるエアフレッシュナー機能も便利で、これまでになかったソリューションだ。各部屋に芳香剤を置かなくても家全体を良い香りにしてくれる機能はロボット掃除機だからこそ実現できたアイディアだろう。
世代を重ねたエコバックス機の優秀さは買い
他にも使い捨てゴミ袋のコネクタが紙製になっていたり、フィルターに3層構造の高性能なものを採用していたりと痒いところに手が届く仕様のT10 PLUS。それもこれも早い段階から水拭きなどの新機能を採用して磨き上げてきた歴史が実現しているものだ。
数あるロボット掃除機企業の中でもエコバックスはかなり洗練され、実用度も成熟期に入っている。なかでもT10 PLUSは水拭き機能を搭載したロボットとしては比較的安めなので、掃除機能だけのロボットを使っている方は次の一台には検討すると良いのでないだろうか。水拭きも自動化できる便利さは確実に投資の価値があると断言したい。(ROSETTA・木村ヒデノリ)
木村ヒデノリ
ROSETTA株式会社CEO/Tech Director、スマートホームブランドbentoを展開。
普段からさまざまな最新機器やガジェットを買っては仕事や生活の効率化・自動化を模索する生粋のライフハッカー。2018年には築50年の団地をホームハックして家事をほとんど自動化した未来団地「bento」をリリースして大きな反響を呼ぶ。普段は勤務する妻のかわりに、自動化した家で娘の育児と家事を担当するワーパパでもある。
【新きむら家】
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