ドラマの場合、やはりタイトルから内容が分かるものの方が、最初はチャンネルを合わせやすい。だから内容が分かりづらい場合は、サブタイトルをつけたりもする。

今回も『オレたちバブル入行組』にした方が、バブル世代を主人公にした話であることと、銀行を舞台にした話であることはストレートに伝わったはずだ。でも、このドラマは、いさぎよく『半沢直樹』というタイトルだけにした。

当然、原作を知らない人たちからすれば「誰だよ、半沢直樹って」という疑問は出ただろう。そこで、主演が堺雅人であることが効いてくる。

堺雅人の個性については今さら説明するまでもないが、『リーガル・ハイ』で見せたエキセントリックな演技は強烈なインパクトがあった。

昨年4~6月期の連ドラから1年後の今年の春にスペシャルが放送され、10月からは続編の放送も決まっている。そんな今キテる堺雅人が、なんだか分からないけどタイトルにもなるくらい個性のある主人公を演じるらしい、という視聴者の想像をかきたてる効果が、このシンプルなタイトルにはあった。

つまり、タイトルと堺雅人のキャスティング、この2つが揃って初めて“つかみはOK”だったのだ。

もし『オレたちバブル入行組』というタイトルでドラマ化していたらどうだっただろうか。
今さらバブル世代を主人公にしたドラマをたくさんの人が見たいと思っただろうか。

『半沢直樹』というタイトルは、実はかなりの比率で今回の快進撃の要因になっていると思う。

 

すべてが絶妙なバランスに

注目を集めて始まった作品でも、実際に第1話、第2話と放送されると、視聴率が下がる作品は多い。いや、むしろそういう作品がほとんどだ。

これはもちろん、とりあえず最初だけいくつか見て、気に入ったものだけを残すという視聴スタイルが現在の連ドラでは一般的だから。しかし、このセレクションにも『半沢直樹』は勝った。

初回の視聴率19.4%のあとは、21.8%、22.9%、27.6%、29.0%と続き、今のところ数字が下がったことはない。

『半沢直樹』の場合、2話と3話の間に参院選の開票特別番組、5話と6話の間に世界陸上の最終日があって、2度も放送休止になった。それなのに視聴者が離れなかったのは、注目度だけでなく、内容も伴っているということだ。