この視聴者が離れない面白さに関しては、すでにいろいろなところで検証されているが、やはりバランスの良さは大きな特徴だと思う。

『半沢直樹』は、チーフDの福澤克雄や音楽の服部隆之など、『華麗なる一族』をつくったスタッフがいるので、一見重厚な雰囲気もある。でも、原作はエンターテイメントに徹したものなので、おカタい企業ドラマというテイストではない。

このあたりのバランスを、プロデューサーの伊與田英徳が、コミック原作の経験もある八津弘幸を脚本に抜擢するなどして、うまく調整していると思う。

そして、次もまた見たいと思える最大の要因は、なんといってもその痛快なストーリーだ。主人公の半沢直樹が、銀行の内外に現れる敵と戦い、やられたらズバッと倍返しをしていく。基本的には勧善懲悪のスタイルになっていて、最後は悪いやつを懲らしめる。これほど分かりやすくて見やすいストーリーはない。

ただ、よくある勧善懲悪モノと違うのは、半沢直樹は会社の上司にも正面から立ち向かっていくところだ。

あとになって、普段の自分は仮の姿で実は大物でした、みたいな種明かしはない。いつもはさえない社員ですけど本当は会長の特命で動いてました、みたいな後ろ盾もない。半沢直樹は自分の信念にもとづいて、自らのネットワークを使い、負ければ飛ばされる覚悟で立ち向かっていく。そこが格好いいし、共感を得られる要素だ。

もちろん、実際に半沢直樹のような言動をしたら、現実の世界では大変なことになることも視聴者もわかっている。そのリアルとフィクションのバランスが、またこの作品は絶妙なのだ。